2008年7月18日 (金)

ブログを書き続けての3年間

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  へぇ~っと、びっくり。2008年7月10日の朝日新聞、朝刊の小さな記事。

「国内ブログ、単行本2700万冊分・総務省調べ」の見出し。

「インターネット上で公開されている国内のブログが、08年1月末現在で、約1690万件あり、記事総数は約13億5千万件と、単行本約2700万冊分のデータ量に相当することが、総務省の調査でわかった。」

  これは1月末の調査で、今は7月。毎月40万~50万件のブログが新設されているそうだから、2千万件は突破しているだろう。

  こんなにブログを書いている人が多いということは、他人さまのブログも見ているのだろうから、これでは新聞、雑誌、書籍なんかを読んでいるひまはないだろう。

  ぼくはパソコンもネットも、携帯電話もいじったことがない。そんなぼくに3年前、次男の嫁さんが「お父さん、ブログをはじめたら」と、勧めてくれた。

  嫁さんは、実践女子大学の英文科出身で、頭のいい、しっかりもの。ネットも堪能のようだ。

  その頃、『薔薇族』は廃刊になっていた。雑誌があれば「伊藤文学のひとりごと」のコーナーや、「編集室から」に読者へ向けて、ぼくの考えを発信できたが、それができなくなり、欲求不満になっていた。

  そうだネットを通じて、多くの人にぼくしか知り得ない話や、同性愛というものをより多くの人たちに知ってもらいたいことを発信しようと、嫁さんの力を借りて、ブログなるものに文章を書き出した。

  一篇、一篇を全力投球で書き続けて、いつの間にか3年も経ってしまった。その量はかなりの量になっている。

  ぼくは10年日記を書き続けているが、うっかりして書き忘れてしまって、次の日に書こうと思っても、何をしたか、どうしても思い出せないことがある。ブログに何を書いたのか、ほとんど覚えていないが、先日、今までのぼくのブログを紙焼きにして届けてくれた、ありがたい人がいた。

  最初から読み出したら、面白くてやめられない。いっきに何時間もかけて読みきってしまった。

  いつか英国に留学中の女性が、偶然にぼくのブログを見つけて読み出して、6時間かけて読んでしまったと、メールをくれたことがあった。

  ブログを本にするなんて、安易過ぎるかとも思ったが、いくつかの項目に分けて、それぞれ見出しをつけて、読み易いようにしてみた。

『ぼくしか知らない話=親兄妹にも隠して言えないこと』というタイトルを付けてみた。そしてちょっとコネのあるF書房に原稿を送ってみた。

  出版不況の折り、単行本にすることは、今売り出し中のサマージャンボ宝くじよりは、確率が高いだろうが、どんなことになることやら。

  ぼくのブログは、一日に何百人。多いときは何千人もの人が見てくれているようだから、本になれば少しは売れるかも知れない。

  それにしてもネットなんて、すごいものが現れてしまったものだ。

★『薔薇族』の注文の方法は、郵便局で千円の定額小為替を作ってもらってお送り頂くか、千円札を紙にくるんでお送りください。155-0032 東京都世田谷区代沢2-28-4-206 伊藤文学

★新しく『薔薇族』を置いてくれる古本店・「ビビビ」が下北沢にあります。〒155-0031 東京都世田谷区北沢1-45-15 スズナリ横丁1F・北沢タウンホールの筋向いです。読者好みの古書が沢山置いてあります。電話03-3467-0085です。

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2008年7月12日 (土)

ショック! 九天社負債6億円で破産!

出版業界の唯一の専門紙「新文化」が、6月26日号で「九天社が破産・負債6億」と報じている。

  2008年8月15日、2年前にぼくの著書『薔薇よ永遠に・薔薇族編集長35年の闘い』を刊行してくれた出版社だ。

  この本が刊行される少し前に、河出書房新社からは『薔薇族の人びと=その素顔と舞台裏』を、7月30日に刊行したばかりだった。こちらから原稿を持ちこんだわけではなく、2冊とも出版依頼があって書きあげた本だ。

  その頃、ぼくは左ひざの軟骨がすりへってしまって、歩くのもままならなかったときで、その痛さに耐えて、なんとか原稿を書きあげた。

  ラッキーなことに文春ネスコから、5年ほど前に刊行した『編集長・秘話』を幻冬舎がアウトロー文庫に入れてくれて、『薔薇族編集長』というタイトルで出してくれた。

  東京医大の整形外科で、左ひざに人工ひざを入れる手術を受ける直前に、3冊の本の出版を祝う会を、京王プラザホテルで友人、知人が多数集まってくれて、盛大に開くことができた。

『薔薇族』が2度も廃刊に追いこまれて、失意のどん底にあったぼくに、これらの本の刊行が、どれだけ明るい希望を与えてくれたことか。

  しかし、残念なことに本が出たあとに、1か月も入院してしまったために、本の宣伝活動ができなかった。本を話題にするためには著者が自分で動かなければ駄目なのだ。出版社の人は、すぐに次の本の準備に追われてしまうから、動きようがないのだ。

  朝日新聞の書評欄にとりあげられるということは、大変なことなのだが、九天社の『薔薇よ永遠に・薔薇族編集長35年の闘い』は、学習院大学の教授が、好意的な書評を寄せてくれた。ネットで注文する人が、これでいっきに増えてくれた。

  九天社の本は3千部、河出書房新社の本は6千部、幻冬舎の文庫の刷部数は1万2千部ということだ。

  九天社の女性社員のKさん、この方は以前宝島社ムックで、ぼくのことをとりあげてくれた方だ。そのKさんが九天社に移っていて、ぼくのことを思い出して、執筆を依頼してくれたのだ。

  若い社長さんも二度ほど、わが家を訪れてくれたし、ぼくも日本橋の大きなビルの9階の事務所を訪ねたこともあった。

  広いフロアーに10数人の社員が働いていた。ビジネス書や資格参考書などを主に出していたようだが、ヒットには恵まれなかったようだ。

  ぼくの親父は、出版社は机と電話があればいい。人を使うなといつも言っていた。人を使うと出したくない本も出すようになってしまうというのだ。

  九天社のあの広い事務所、家賃だって大変だったに違いない。見栄をはらずに場末の狭い事務所でよかったのでは。

  社員を10数人も使っていれば、その人件費だけでもかなりの出費になってしまう。黒字にするためには、相当の売上がなければやってはいけない。

  それにしても6億の負債というのは大変な額だ。この3冊の本が、どのくらい売れているのかは教えてくれないから分からないが、売れなくて迷惑をかけたのではないかと、責任を感じている。

「新文化」の同じ号に書店での本や、雑誌の売上が年々落ち続けていると報じているのは悲しい。

  自費出版専門の出版社「文芸社」が、『B型自分の説明書』が大ヒットして百万部を突破したというお礼の広告を出している。そりゃ、一年間の発行点数が講談社よりも多いのだから、マグレ当たりというしかない。

  ぼくも一生懸命書いた原稿だし、あまり人をほめることのない、ルネさんと竜さんが、九天社の本を面白かったとほめてくれた。

  素晴らしい出来ばえの本を出してくれた、九天社さん、本当にありがとう。九天社はなくなってしまっても、この本はいつまでも残るに違いないと信じている。

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2008年7月10日 (木)

山川純一 原画

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山川君の原画をオークションに出品しています。

興味がある方は下記URLにアクセスを。

http://page4.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/d84289369

http://page7.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/g60562956

http://page2.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/b87071527

★『薔薇族』ご注文方法・〒155-0032 東京都世田谷区代沢2-28-4-206・伊藤文学宛に千円札を紙にくるんでお送り下さい。先着10名さまに刈谷市美術館での招待券を進呈します。

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2008年7月 9日 (水)

ぼくの宝石のように輝く文章を読んで!

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  季刊誌『プリンツ21』から電話があって、400字詰の原稿用紙2枚で、映画の感想文を書いてほしいという依頼があった。

  早速、渋谷東映に『相棒』を見にいった。主人公の二人を薔薇族的に見てやろうと考えたのだが、構想がまとまらなかった。

  そうだ!今、児童ポルノの話題が多いので、少年愛をテーマにした作品、ヴィスコンティの『ベニスに死す』を見ての感想を書こうと思いたった。

  ビデオ屋からDVDを借りてきて見ることにした。この作品、すでに何度も見ているが、画面に登場する少年の美しいこと。少年が登場するシーンは、画面に花が咲いたようだ。

  一瞬にして少年のとりこになってしまう老教授。何度も少年に会うたびに、その想いは深まっていく。

  ぼくはタイトルに「かげろうのような美しくもはかない恋」と付けた。原稿用紙2枚の文章なのに、こんなに力をこめて書いたことはない。映画の中の老教授になった気持ちで書いた文章だ。

  114頁の上段にひっそりと載っている。短いけれど、宝石のように輝いていると自負している。

  6月26日に書店で売り出されるというので、下北沢のスーパー「ピーコック」に買い物に行ったついでに、4階の三省堂書店に行って、店員に雑誌があるか聞いてみた。驚いたことにたった1冊入荷して、すでに売れていてないという。

  本多劇場が入っているビルの「ヴィレッジヴァンガード下北沢店」に行ってみた。『薔薇族』を置かしてもらうことをお願いしてあったので、その返事を聞いてみた。本社からは置いてもいいということだが、目下検討中という返事だった。

『プリンツ21』の前の号の「四谷シモン特集」が、山のように積み上げられていたのが、しばらくして行ってみたら、残部が数冊になっていたので、売れたのかと聞いてみたら、なんと多くとりすぎたので返品したのだそうだ。ああ、現実はきびしい。とにかく本が売れないのだ。

  映画の感想ということだったので、映画の特集かと思ったら、「高畠華宵特集」だった。宇野亜喜良さんも「現代に連なる抒情」と題して談話を載せているが、華宵をはっきりと同性愛の人と書いている。

「恐らくオリジナルで着物や洋服をデザインするような仕事ができるタイプの人。その辺はホモセクシュアルの世界の人に特有の感覚だと思うんです。」と。

  美少年のイラストもたくさん紹介されている。定価1500円。華宵の妖艶な美少年に酔いしれてください。

「ヴィレッジヴァンガード下北沢店」TEL03・3460・6145 一度足を踏み入れたら、おもちゃ箱をひっくりかえしたような空間から、すぐには出ることができないだろう。

  下北沢に立ち寄ったら、ぜひ訪れてほしいお店だ。そのうち『薔薇族』も置いてくれるだろうから。

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2008年7月 7日 (月)

吉原掟(おきて)にしばられた女たち

―『娼妓解放哀話』から祖父の足跡をたどる②―

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「江戸が日本の中心になって、だんだんに繁昌してきたので、以前、葭(よし)や葦(あし)の生い茂っていた吉原辺が江戸の中心になってしまった。そこで将軍、家綱のときになって、江戸市のまん中にかかる遊廊地が存在するのは風教上よくないというので、明暦2年10月9日に、本所、浅草二か所に移転候補地を指定して、その何れかに移転するように命令を下した。

  この命令が下って、遊廊側がまだ相談中の明暦3年正月18日に、有名な振袖火事が本郷丸山の本妙寺から出、江戸市の大半を焼きつくしたので、吉原遊廊もその火事に追い立てられて、日本堤と浅草寺との間、千束村に接した所に、二町四面の地に建設したのが、今日存在する新吉原なのである。」

  ぼくは残念ながら、吉原というところに足を踏み入れたことがないので、どんなところかまったく想像がつかない。

  この新吉原で働く遊女たちのための「吉原掟(よしわらおきて)」というものがある。

  1・遊女勤めの儀は、第一にいつわりをもっぱらとして、誠の心あるまじきこと。

  2・美男、大通(遊びの道にくわしく通じていている人のこと)、心意義の面白き客たり

      ともほれることは停止致し置候段、この儀はきっと相つつしみ申すべきこと。

  3・醜男(ぶおとこ)、ひげ武者、老人、または、梅毒かきのお客なりとも、金たくさん

      の方はほれる体(てい)に見せかけること。

  4・朝夕の食事はひかえ目にして、客のものをたんと食べ候よう心がけること。

  5・召抱えのみぎり、代金相渡せる上は、年明の日まで、主人より一銭の合力もこれな

      きあいだ、さよう心得、せいぜい主人方へ金を過分に取り入れるよう心がけること。

  6・衣類、夜具、頭のもの、その他の諸道具残らずこしらえ方致し候については、万事

      客人にねだりかけ、朋輩にまけぬよう気をつけ借金出来候ことは毛頭考え出すまじ

      きこと。

  7・定め通りの仕着せは地合あしく、値段の安い品をあたえる故なるだけ、自分の力で 

      上等の衣類をこしらえ申すべく、仕着せは安物故使用致すを恥と心得、早速のけ候

      こと、勝手たるべきこと。

  この他数か條で、これがいつ頃書かれたものか、その時代は明確ではないが、この吉原掟の内容は、日本全国の遊廊を通じて、長く実行されていたものである。こんなに悲惨きわまるおきてのある遊廊へ売られる女は、水金という手付金をもらって、それで支度をしたものらしい。」

  今の時代でも、ソープランドや水商売で働く女性たちに、このおきては通用するのではないだろうか。ぼくはキャバレーで働く女性しか知らないが、その身上話は本気にしたら大変なことになってしまう。

  客のものをたんと食べろ。これもその通りで、店が終ってから寿司屋などへ誘ったら、高いものばかりを注文されてしまった苦い経験がある。

  こんなひどいところで働かざるをえなかった女性たち。よく耐えていたものだ。哀れとしか言いようがない。

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2008年6月25日 (水)

お奉行さまに訴えて自由の身に

―『娼妓解放哀話』から祖父の足跡をたどる―

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  ここに一冊の古い本がある。ぼくにとって宝物であり、人さまに誇っていい本だ。著者は沖野岩三郎さん。書名は『娼妓解放哀話』。昭和5年6月10日発行、中央公論社刊・定価は壹圓弐拾銭。

  1998年1月27日、上田・ほその書店という古書店から、8925円で購入したものだ。

  ぼくの生まれが昭和7年で、76歳だから78年前の本だ。序文にこんなことが記されている。

「日本民権史の一部として、娼妓自廃の歴史を書いてみたいと思い出したのは、もう10年も以前のことで、亡くなられた伊藤冨士雄君(ぼくの祖父で、大正12年6月2日、享年53歳)が、私を三田四国町、惟一館に訪ねてこられたときからである。

  伊藤冨士雄君は、救世軍士官として娼妓の自由廃業に一身を捧げた闘士であった。同君は凡そ一千二百名の娼妓から、自由廃業の相談を受け、その中の九百八十七名を完全に廃業せしめたのである。

  昭和5年1月から4月までの中央公論に、私は『娼妓自廃九百八十七人』と題して、伊藤君から聞いた自廃娼妓の境遇や、エピソードを読物風に書いた。ところがこの読物は意外に反響があったので、これをまとめて単行本にしようという話が、中央公論社の出版部と私との間にまとまった。

  私の計画は伊藤冨士雄君のなした仕事を中心にして、日本に於ける娼妓の自由廃業はいかにして起り、いかなる影響を社会に与えたかを研究するにあった。(後略)」

  沖野岩三郎という方が、どんな方だったのかは不明だが、参考文献を読み調べて書いたものでなく、祖父の伊藤冨士雄から直接話を聞いて書いたものであるというところに、この本の価値がある。

  法律的なところも多く書いてあって、難しいが、今の人が読んでも面白いところを何回かに分けて紹介してみたいと思う。

  娼妓の自由廃業ということは、救世軍が最初ということでなく、今から363年前、徳川時代、江戸吉原ができてから28年目の正保2年11月に、元吉原遊郭、並木屋の遊女、佐賀穂というのが、自分の愛人と結婚したさに遊郭を脱け出して、町奉行朝倉石見守に訴え出て、無事に廃業を遂げたのが、日本文献に於ける自由廃業の最初だそうだ。

  恋は強し。封建時代の世の中で、勇気を出して遊女の身でありながら、愛する人とそえとげたいと、町奉行のもとに駆け込んだ、佐賀穂という遊女はすごい。

  その遊女の願いを聞いて、聞き届けてくれた奉行もほめられていい。ぼくはテレビ『水戸黄門』ファンで、必ず見ているが、奉行はたいがい悪役で、遊郭のオーナーの味方になってしまうだろうに、遊女に味方する立派な奉行がいたなんて、うれしい話ではないか。

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2008年6月17日 (火)

新宿歌舞伎町クラブ「リー」の思い出

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  ぼくは自分が学ばせてもらった学校を愛する気持ちは、誰よりも強いと思っている。

  代沢小学校は昭和144月に入学。終戦の年の前の年、昭和19年に卒業。昭和20年の4月に世田谷学園に入学。昭和233月に4年修了で、234月に駒澤大学の旧制の予科1年に入学。28年の3月に卒業している。

  小学校は太平洋戦争のもっとも激しかった時代で、ほとんどの子供が地方に疎開したりしているので、住所も不明で同窓会らしいものを開けなかった。

  世田谷学園を4年修了で大学に入れたし、5年で大学に行く人、新制高校3年を終えて大学に入った人と、3通りあって同期会といってもややこしいことになっている。

  世田谷学園の同期会は、ぼくがお節介役を引き受けて、20年以上続いている。卒業生は150名ぐらいいたが現在、住所が判明している人は60名ぐらい。34割の仲間は、もうこの世にいないと思われる。1年にひとり、ふたりと他界されている。

  424日の夜、下北沢駅前の居酒屋「和民」で同期会を開いたが、17名の仲間が集まってくれた。

  世田谷学園の全体の同窓会も毎年開かれているが、衰退するばかりだ。ぼくは役員になっているので、役員会にも必ず出席しているが、若い卒業生はほとんど姿をみせない。

  610日は作曲家、吉田正さんの没後10年の命日だそうで、NHKホールで夜8時から「歌謡コンサート・歌に希望を吉田正特集」が催された。

  駒大の先輩で作詞家の吉川静夫さんの作品もいくつか目についた。ぼくは「駒大マスコミ人の会」を結成して、吉川静夫さんを会長に招いて、会合を二度ばかり開いたことがあったが、長くは続かなかった。

  その頃の駒大の卒業生で、マスコミで活躍している人は少なかったから。

  30年近くも前のことだったろうか、世田谷学園の役員会が終わったあとに、大手ゼネコンのお偉い方が来ていて、当時の杉校長と、文春の村田耕二君と、なぜかぼくを歌舞伎町のクラブ「リー」に招待してくれた。

  当時のクラブ「リー」は一流のナイトクラブで、ぼくなど入れるようなところではなかった。

  歌手は朝丘雪路さんが歌っていた。バンドは踊りながら指揮するのが有名な、スマイリー小原さんだ。

「歌謡コンサート」で、昭和30年、40年代のナイトクラブやキャバレーが全盛時代の、ムード歌謡を聞きながら、華やかなクラブ「リー」でのひとときを思い出していた。

  場内で撮った写真が、どこかに残っていると思うが、謹言実直な杉校長の固い表情と、クラブ「リー」は、似つかわしくなかった。

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2008年6月15日 (日)

本の取次店「トーハン」の元社長、角屋正隆さんは、やさしい思いやりのある方だった。

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日本で最大手の本の問屋(取次店)「トーハン」の社長、会長であった角屋正隆さんが、429日に93歳で亡くなられたことを新聞で知った。

  昭和33年の11月に、同棲してから1年目、やっと女房が中学の教師となって、その給料をためての結婚式。

  学生時代から父の仕事を手伝い、ぼくは昭和28年に卒業してからも、そのまま仕事を続けていた。

  父は食べさせて、小遣いをやっていればいいと思っているのか、給料をくれなかった。

  飯田橋の「東京大神宮」での、ワインとケーキだけのささやかな結婚式だったが、お世話になっている本の取次店の仕入課の人を招いたが、父とぼくだけの小さな出版社なのにみなさん出席してくれた。

  当時「トーハン」の仕入課長だった、角屋さんの出席は本当にありがたいことで、それからの仕事に役に立ったことは間違いない。

  その角屋さんに忘れられない思い出がある。

  僕の前妻は33歳で事故死してしまったが、その息子は女房に似て頭がよく、桐蔭学園高校を卒業して、京大理学部に進学、今はソニーに勤めている。桐蔭学園は規則のやかましい学校で、夏休み明けに登校したら、髪の毛が長過ぎるというので学校に入れてもらえず帰されてしまった。

  ちょうど、その日は月曜日で理髪店は休業日。そこで僕は思いついたことがあった。いつも通っているトーハンの地下に理髪店がある。そこで刈ってもらおうと、息子を車に乗せてトーハンにおもむいた。

  ところが理髪店のご主人、ここは社員のためのものなので、外部の人の髪の毛を切ることはできませんと、ていよく断られてしまった。そこをなんとか事情を話して、ご主人に懇願したところ、しばらく考えていて、「それではあなたが最初にハサミを入れて下さい。失敗してしまったので、私が直すということにしますから」と言ってくれて、髪を刈ってくれたのだ。

  翌日、無事に息子は登校することができたので、その頃社長さんになっていた角屋さんに、こんな親切な社員の方がいますと、お礼の手紙を出した。

  後で理髪店のご主人は、角屋さんにおほめの言葉を頂いたそうだ。角屋さん、その話を「新文化」(出版界唯一の業界紙)の記者にしたようで、後に記事になって「新文化」に掲載された。

  現在、トーハン地下の理髪店は閉められたままになっている。ここを訪れる社員と親父さんが将棋をさしている姿をよく見かけたものだ。僕も親しくなって、仕入れや店売所を訪れるときに寄って、お茶をごちそうになり、世間話に花を咲かせたものだ。

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