『三島由紀夫 剣と寒紅』こんなに面白い本はない!
2月22日に膵臓ガンで76歳で亡くなった作家の福島次郎さん。「バスタオル」と「蝶のかたみ」で二度、芥川賞候補になった。98年、故三島由紀夫さんとの同性愛の交際をつづった小説『三島由紀夫 剣と寒紅』を文藝春秋から刊行して話題になったが、小説内での三島さんの手紙の公表が著作権侵害にあたるとして、遺族から訴えられ、出版差し止めになってしまった。
昨年の9月に宝島社から、福島次郎さんの短編を集めた『淫月』が刊行され、その書評を書き『薔薇族』に載せて送ったことから急に親しくなって、電話や、文通を重ねていた。それが急に亡くなってしまったことから買い損ねてしまっていた『三島由紀夫 剣と寒紅』をなんとしても読みたくなって、息子の嫁に頼んでネットで探してもらった。
発禁処分になってしまった本だから、1万円はするのかと思ったら、なんと550円だというのでびっくり。すぐに送られてきたが、まったくの新品、悪いと思ってぼくの著書を送ってあげたが返事はこない。余計なことをしてしまったのかも。
いっきに読んでしまったが、こんな面白い本はなかった。同性愛である三島由紀夫さんをここまで書いていいのかと思うぐらい書かれている。三島さんの奥さんが生きておられてたら、とても出版することはできなかったろう。しかし、残された息子さんや、娘さんには読むに耐えられなかったに違いない。
三島さんの手紙など、ほんの一部分なのに遺族が訴えたという気持ちはよく理解できる。
3月6日付けの東京新聞の夕刊「大波小波」欄に「福島次郎の死」と題して、ヘテロさんが書いている。
「彼はゲイの作家である。今日の我々は毎日のようにゲイ(もしくはえせゲイ)のテレビタレントに接していて、差別意識や拒否反応も薄れつつあるが、福島の世代はモロにマイノリティの意識を背負わざるをえなかった。被差別意識と罪悪感、そして秘められた快楽への濃密な熱情を、福島の作品はいつもたたえていた。それはゲイでない読者にとっても忘れられない特異な存在感を放っていた」
『薔薇族』創刊以来、次々と有能な方々が小説を発表してくれたが、誰一人プロになろうという方はいなかった。『薔薇族』の誌上に載ることがよろこびであって、書きたいものを書きつくしてしまうと、書かなくなってしまう。そうすると、また別の人が現われるという繰り返しだった。
福嶋さんのようにゲイの作家で、ゲイ雑誌に書かないで、一般誌のみに発表するという作家も何人かおられる。
昨秋刊行された『淫月』が遺作になっていしまったが、もっともっと書いてほしかった。残念でならない。
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コメント
たまたま乗ったタクシーのラジオで「次は薔薇族編集長の伊藤文學さん…」
え、ほんと!と思ったものの、CMの間に目的地に到着してしまいました。惜しいなあ。
投稿: かりんと | 2006年4月12日 (水) 00時11分
福島次郎さん、こんな偉い作家がいたんですね、知りませんでした。
本屋さんか図書館で、福島さんの本探して、読んでみます。
投稿: INOUE | 2006年4月11日 (火) 15時15分
TBSラジオ、聞きました。たいへん面白かったです。
投稿: ランディー | 2006年4月11日 (火) 14時59分
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投稿: dagu | 2006年3月26日 (日) 12時52分