東京医大発③ 半死半生の目に合わされても
「救世軍」というと、若い人は歳末になると渋谷や新宿の駅前で、社会鍋という募金運動をしている人たちのことしか思い浮かばないだろう。
救世軍は軍隊組織で、全国に小隊を置き、キリスト教の布教活動をしている。ぼくのおふくろも杉並にある、救世軍病院で老衰で亡くなるまで面倒を見てくれ、どれだけ助かったことか。
救世軍の士官だった祖父は53歳で、大正12年に病死したが、祖母はぼくが大学生の頃まで長生きしていて、その間、救世軍から祖父の恩給が支給されていたので、祖母からお小遣いをもらったものだ。
イギリスの貧民街に生まれた、ウイリアム・ブースという人が救世軍を設立した。その説教たるものは大変なものだったらしい。66歳でアメリカに渡り、354回の説教で45万人の聴衆に語ったというからすごい。それだけ悩める聴衆の心をとらえたということだろう。
今の日本、毎日、毎日、考えられないような殺人事件がおこる。荒んだ世の中、今こそ偉大なる宗教家が現れて世直しをしてもらいたいものだ。
修学旅行で京都のお寺に行くと、坊さんがもっともらしいお説教をしてくれるが、そのときだけのものだ。
『娼妓解放哀話』に書かれている、祖父の伊藤冨士雄の働きはすさまじいものがあった。
「大正3年9月2日に、伊藤冨士雄君の身上に恐ろしい事件がおきた。
洲崎弁天町の米河内樓の娼妓歌之助と、中野樓の娼姐しのぶの両人から、廃業したいという手紙がきて、面会に出かけて行って起った事件だ。
二人を訪問してその決心を聞いたところ、どうしても廃業したいというので、伊藤君は早速、樓主のところへ電話をかけると、二人の樓主はたちまち二十人ばかりの暴漢を連れてやってきた。伊藤君が二人の娼姐を連れて警察へ出頭しようと、病院の表まで出たところを外に待っていた二十人あまりの暴漢と、院内にいた暴漢とで、伊藤君ら三人をはさみうちにして、打つ、ける、引き倒す、踏むという大暴行を働いた。
半死半生の目に合わされた二人の娼姐は、人殺し! 人殺し!と叫びながら近所の交番に逃げこんだので、巡査に保護されて、すぐ警察に連れて行かれた。
二人は警察署で大体の様子を話して、「早くあの救世軍の人を助けに行って下さい。もう今頃はなぐり殺されているかも知れませんから」と言ったので、警察署は驚いて二人の警官を現場に急行させたのである。
二人の娼姐から引離された伊藤君は、四十余人の暴徒から滅多打ちにされたため、全身に十三ヶ所の重傷を負って昏倒してしまった。しばらくして「おい、しっかりしろ!」という声が耳に入ったので、目を覚ましてみると、カーキ色の制服を着た憲兵が自分の上に馬乗りになって、人工呼吸をやっていてくれるのに気付いた。
そこへ警察署から巡査が駆けつけて、くるわ内の上田病院にかつぎこんで手当てをしたので、やっと生命をとりとめることが出来たのであった。」
千人近い娼姐を解放するためには、このようなことは一度や二度ではなかったようだ。
ぼくは世間の人が同性愛に対する認識があまりにもなさ過ぎる、無知ということが恐ろしいということを何度も書いてきた。大正時代では、お金で娘を売ってしまうということが当たり前だった時代、それだけ祖父たちは苦労したということだ。
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伊藤さんのお爺様はそのような方だったんですね。驚きました。私は1度伊藤さんに原稿をみて頂いたことがあります。ホモ小説で、今思い返せば汗顔の至りです。
私は長年神経症を患っておりました。それを何とか作品にできないかと現在取り組んでおります。
本当に難しくて投げてしまいたくなります。
ブログもやってますが、よかったら御覧頂ければ幸甚です。また祭りのブログをリンクさせて頂いてよろしいでしょうか?御返事お待ちしてます。
投稿: 小泉響子 | 2006年9月17日 (日) 10時56分