東京医大発④ なんにも悪いことをしていないのに
東京医大発④ なんにも悪いことをしていないのに
東北の貧しい農家が、天候不順でお米が不作になると、とたんに生活が苦しくなってしまう。大正時代、どこの農家にも子供がたくさんいた。
その娘を親が吉原などの遊郭に売らざるを得なかったのだ。小学校もろくに行けない無学の娘たち。女郎屋の主人の言うままに売春をせざるしかなかった。
ぼくの祖父、救世軍の士官、伊藤冨士雄は過酷な娘たちの現状をこう語っている。
「実に驚いた話です。今までぼくの所へ廃業したいからと言って助けを求めてきた娼妓の中の158人に、樓主(女郎屋の親父)との貸借関係がどうなっているかと聞くと、正確に自分の借金がどのくらいあるのか知っていると答えた者は、僅か70人だけでした。
この70人を廃業させた際に、くわしくその貸借関係を調べてみると、1人分の前借金は平均337円74銭で、総計金2万3641円80銭になっていました。
ところでこの前借金2万3641円80銭に対して、70人の娼妓が悲しい仕事をさせられた年月は、合計186年10ヶ月になります。即ち一人前平均2年8ヶ月稼いだのですが、樓主の帳面では、彼女らが合計186年10ヶ月の間、からだを売ってやっと328円55銭しか、前借金の償却ができていない勘定になっています。つまり彼女らは平均2年8ヶ月ずつ、からだを売って、一人前、たった4円69銭3厘の借金払いしかできなかったのです。
さんざん淫乱男のオモチャにされて、死ぬほどの苦しい思いをしながら、1か年に僅か1円75銭9厘、1ヶ月に割当てると、たった14銭6厘6毛、ひと月平均4厘9毛弱ずつしか借金が返せないという仕組みになっているのです。
娼妓に自由廃業をすすめることを悪事でも犯すかのように思う人たちは、この計算をひと通り見るがよい。今、この70人が自由廃業をしないで、正直に樓主の言いなりになって、からだを毎日、毎日、売って稼いで、娘の親が借りた前借金の無くなる日を待つとしたならどうでしょう。
1日平均4厘9毛では、じつに188年10ヶ月と6日の長い年月を稼がなければならない計算になるのです。いかに病気をしない元気な女性であっても、娼妓を188年10ヶ月も勤められるはずがありません。どうしたって1日もはやく公娼全廃まで漕ぎつけなければならないが、まず今日の所では娼妓自身に「自分たちはお金で買われた身でない」という自覚だけでも與えてやりたいものです。」
祖父は救世軍に入る前は、「玉屋」という測量機械の会社の工場長をやっていて、頭のいい人だったようだ。
こんなひどいことが昭和32年の売春禁止法が施行されて、公娼制度がなくなるまで続いたのだから日本という国はひどい国だ。
貧乏というのはつらいことだ。なんにも悪いことをしたわけではないのに、からだを売らなければならなかった女性たちが数多くいたということを知ってほしいのだ。
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