北沢川は子供たちの遊び場
東急バスの車庫がある淡島から、環状七号線通りの宮前橋まで、桜並木が続き、再生した水を流して、せせらぎ公園になっている。 世田谷区が数年かけて工事を進め、来年の三月には工事が完成するそうだ。この桜並木を寄贈した人は、松崎さんという方で、昭和の初期に建売住宅で財を成したということだ。 鎌倉通りの鎌倉橋のほとりに、桜の寄贈者のお名前がきざまれた、みかげ石の石塔が建てられていたが、何者かに倒されて川の中に投げこまれていた。 昭和七年頃に桜が植えられたと思うが、父が撮ったその頃の桜並木の写真を見付け出した。それは植えられたばかりの驚くほど細い桜の木だ。桜の木の寿命って、七、八十年ぐらいというから、そろそろ寿命がきているようだ。すでに枯れてしまって植え替えられた桜の木も多くなっている。 ぼくも生まれたのが昭和七年の三月だから、七十五歳になる。ぼくの寿命も桜の木と同じで、そろそろ終わりが近付いてきたのかも知れない。 この北沢川と目と鼻の先に七十五年住んでいたのだから、この川の移り変わりをずっと見てきたことになる。 近所の駄菓子屋には、三メートルぐらいの細い竹ざおが売っていた。それとネバネバする茶色いもちも。このもちを竹ざおの先の方につけるのだ。 夕方になると、近所の子供たちが川の両岸に何十人も、竹ざおをかついで集まってくる。川の上には蚊とか、虫がたくさん飛んでいるから、その虫を食べに、大きなとんぼが飛んでくる。キンとか、ギンとかいうとんぼだ。そのとんぼをさおを振り回してとるのだ。簡単にとれるようだが、うまい、へたがあって、とんぼは素早いから、そうはとれない。 時間を忘れてしまって、夕食の時間に遅れてしまうから、おふくろに怒られたものだ。 台風が襲ってくると、木造のわが家はゆさゆさゆれて恐ろしかったが、台風が過ぎ去った翌日は子供たちの楽しい時間だった。 川は水かさを増して流れているが、子供たちは長い竹ざおの先に網もつけて、上流から流れてくるゴムまりなどをすくいあげるのだ。落ちたら生命はないけれど、そんなことを考えている子供はいない。夢中になってえものをひろいあげたものだ。 ぼくはその頃、三宿にある世田谷学園に通っていた。代沢小の裏にも川があって、北沢川と合流するところが深みになっていた。 東大原小学校の前の魚屋の息子で、ケンちゃんという同級生がいた。ケンちゃんはからだもガッチリして大きく、いつも自転車で通っていた。ぼくと出会うと必ず荷台の後ろにのせて学校まで送ってくれていた。 ある日のこと、学校の帰りに桜並木を歩いていたら、代沢小の裏の合流する深みに大きな鯉が三匹も泳いでいるではないか。ぼくは急いでわが家に帰り、大きなバケツを持ってきた。 台風のあとなので上流のつり堀からでも流されてきたのだろう。ケンちゃんは川にとびこんで、なんと三匹も鯉を素手でつかまえたではないか。鯉を高々とさしあげたときのケンちゃんの誇らし気な顔を今でもはっきりと覚えている。 その鯉をそのあと食べてしまったのかは、まったく覚えていない。 ★,★ :・.☆.・:* ∴.. *,★ :・. *,★ :・。.・:.+ :。.・:.+ :.☆.・:* ∴..☆.・:* ∴.. *,★ :・。.・:.+ :.☆.・:* ∴.. *,★ :・。.・:.+ :. *,★ :・. *,★ :・.☆.・:* ∴..☆.・:* ∴.。.・:.+ ★:。.・:.+ :。 ●薔薇族自力復刊号・発売中! ☆書店々頭での取扱いもスタートしました☆ ◎メンズショップ「BIGGYM(ビッグジム)」上野店〒110-0015 東京都台東区東上野3-39-7マルヤビル202号 TEL/FAX03-3834-3008 営業時間11:00〜23:00 ◎メンズショップ「BIGGYM(ビッグジム)」池袋店〒171-0014 東京都豊島区池袋2-47-11和企画ビル2F TEL/FAX03-3988-7853 営業時間11:00〜23:00 ◎新宿2丁目「ブックスローズ」 (http://www.books-rose.com/)〒160-0022 東京都新宿区新宿2-14-11 TEL03-3352-7023 FAX03-3341-1240 ◎神田神保町すずらん通り「書肆アクセス」(http://www.bekkoame.ne.jp/~much/access/shop/) ◎中野プロードウェイ3F「タコシェ」(http://www.tacoche.com/)
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