いのちの尊さを世の人に!
ひょっとすると、昭和40年にぼくの妹の紀子(みちこ)と共著で、第二書房から出版した『ぼくどうして涙がでるの』が、年内にリメイクして出版されるかも知れない。ある出版社から話が持ち上がってきたのだ。
ぼくの兄妹は4人。妹と姉が2人。紀子は末娘だ。太平洋戦争が勃発した昭和16年の1月8日に7ヶ月の未熟児として生まれた。
母が風邪からの急性肺炎で、せきを激しくしたために早く生まれてしまった。体重は2キロぐらいしかなかった。
「助からないかも知れませんよ」と、医者に言われたが、産婆さんの献身的な努力で、だんだんに大きくなっていった。
戦争がはげしくなって、庭に掘った防空壕にミルクびんをかかえて、母が出たり入ったりしていたのを思い出す。
姉とすぐ下の妹は父に似たのか、頭がよかったが、ぼくと紀子は母に似たのか頭が悪い。高等学校もあちこちと受験したが入れず、駒大の大先輩の広川弘禅さんが校長をしている青葉学園に、お情けで入れてもらえた。
頭はよくないけれど、目はクリッとして美人で、オッパイも大きく元気のいい子だった。その妹が突然に心臓発作にみまわれてしまった。
東京女子医大病院で心臓外科の権威の榊原先生の診察を受けたら、「すぐに入院の手続きをして下さい。手術をしなければ、あと2、3年しか持ちませんよ」と言われてしまった。
昭和30年代の後半。その時代は心臓手術ができる病院は、そう多くはなかったから、入院を申し込んでも一年は入れないということだった。
幸いにも比較的に早く入院することができたが、手術の日どりがなかなか決まらず、妹はやけくそになっていた。
そんな妹を見かねて、朝日新聞の読者の投稿欄「読者のひろば」に「妹に激励の手紙を」と呼びかけた。昭和37年10月3日の新聞にトップで載るや、その反響はすさまじかった。
この記事が載るや、連日、「紀子さんがんばれ」と激励の手紙が病室に舞いこむ。その数は400通にも及び、小、中学生から90歳のおじいさんまであった。
なかには毎日、勤め先の失敗談や、おにぎりをお弁当に持っていき、笑われた話などを日記式に書き送り、または休日は必ず病室を訪ねてくれるデパートの店員さん。名も告げずに花束をとどけてくれた人もいた。
多くの人の励ましのお蔭で手術も終わり、朝日新聞は「紀子さん、よかったね」という記事を載せてくれた。
その記事のお蔭で、ありとあらゆるマスコミがとりあげてくれて、昭和40年の秋の芸術祭参加作品として、日活が映画化してくれた。
先天性の心臓疾患の子供たちの存在を世に知らせる、大きなきっかけを作ることができた。
今の時代こそ「いのちの尊さ」を世の人の知ってもらわなければならない。昭和30年代、まだ日本が貧しい時代だったけれど、お互いに助け合い、励まし合って生きていた。
入院している患者同士もいたわりあっていた。手術に行く患者をみんなが「頑張って!」と送ったものだ。
また『ぼくどうして涙がでるの』を出版することによって、忘れられてしまった人間同士のいたわり合いをよみがえらせることができたらと思う。
この夏までに全面的に書き直して、年内の出版にこぎつけたいものだ。
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コメント
突然ですが
岩田準一氏の本を読んで…日本における同性愛者の思春期自殺率は少ないそうです。たぶん宗教観からかと思うのですが、キリスト教ですと罪と罰といわれているように、罪意識が強くなる場合がありますが。仏教ですと、人生そのものを感謝するという意味合いで(ご先祖様をと尊厳するという事もあり)、また、室町時代に仏僧が女色を禁止していたことから、同性愛に走っていたという歴史も有って。心中に走るという傾向もないようです。
80年代のアメリカのようにそんなキリスト教観念からの弾み返しでゲイ文化が優勢になっていくというのもありますが。日本のゲイ文化が影に居続ける理由もそこにあるのかもしれません。
まあ命を大切にするということはいいことだと思います。
投稿: ボノボ | 2008年4月25日 (金) 23時10分