人を信じたい!ーロスの空港に置き忘れたかばんー
僕ら夫婦は、ロサンゼルスに3回、サンフランシスコに1回と、ゲイ・パレードに参加することができた。
平成8年7月20日の消印のある手紙が、机の引き出しを片付けていたら見つかった。日本航空株式会社・第1客室乗員部・スチュワーデス・伊藤淳さんからの手紙だ。
「オリンピックが始まり、夏の訪れを肌で感じる今日この頃、伊藤様にはお元気で、ご活躍のこととおよろこび申し上げます。
先日、ロサンゼルス発、成田行きの061便にて、ご一緒させて頂きました、伊藤淳でございます。
ロサンゼルスの空港にお忘れになった、お荷物が無事、伊藤様のお手元に届いたと伺い、ほっといたしました。
『お荷物がみつかりました』と報告した時の伊藤様のあの笑顔、そして共にかわした握手が今でも忘れられません。今でも印象に残っております。
あの時の感動が今日のフライトの活力源になっております。私にとって夏のビタミンCです。
ご主人様から頂いた『人を信じたい』というお言葉にとても重みを感じます。私も常に人を信じ、生きていこうと思います。また、ご主人様の書かれた『扉を開けたら=ロマンの泉美術館物語』は、私の宝物として、何度も読みたいと思います。
素敵な美術館のポスト・カード、どうもありがとうございました。グループの全員に配り、みんなで感動をわかちあいました。
また、いつの日か機内で、お目にかかれますよう、楽しみにしております。」
いつロスを訪れての帰りの時か、忘れてしまったが、ロスで知り合ったゲイ雑誌「フロンティア」のオーナー、ボブさんから、お土産としてプレゼントしてくれたティファニーのガラスの文ちん、それが悲劇の根源になってしまった。
パスポートは僕が持っていたが、カード類やお金が入っているサイフ、タバコケースなど入った手さげカバン。それを女房は肩から下げていた。
最後の飛行機に乗る持ち物検査の機械に反応してしまって、大きなカバンの中を開けさせられてしまった。係の人は、ふたりの黒人の女性だった。
ボブさんから頂いたティファニーのガラスの文ちんの中に鉛が含まれていて、それが機械に反応してしまったようだ。
黒人の女性は、そのガラスの文ちんを見て、「オー、ビューティフル!」と、ニコっと笑ってくれた。
ところが、その時、肩にかけていた大事なカバンを置き忘れてしまったのだ。
機内に乗り込み、飛び始めてから、女房はカバンがないのに気付き、それこそ顔面蒼白、食事が出ても、喉を通るどころではなかった。
日本航空なので、スチュワーデスは日本人だから助かった。空港にカバンを忘れてしまったことを告げたら、無線で空港に連絡を取ってくれた。
空港の係員が黒人の女性だったので、まずカバンが出てくることはないと思ってしまった。それがしばらくして、カバンが見つかったという報告があったのだ。その時の喜びは忘れることができない。
帰国し、数日して荷物が届いた。中身は何一つ無くなっているものはなかった。黒人の女性が係員であるということで、偏見を持ってしまったことを恥じるばかりだった。
「人を信じたい」という文章を日航に送ったが、僕の手紙をみんなの前で読んでくれたそうだ。
黒人のオバマさんが大統領になった。アメリカはきっと、良い方向に変わるに違いない。
☆お知らせ☆
「伊藤文学を囲む会ー『薔薇族』的森茉莉考」
森茉莉さんの部屋に入れさせてもらった人は数少ない。茉莉さんが仕事部屋のようにしていた、カフェ「邪宗門」のマスターにしても入ったことはなかった。その部屋に入った伊藤が見たものは?森茉莉さんの本質に迫る話しを聞いて下さい。
日時/1月31日(土)夕方5時〜
場所/下北沢・「ONE LOVE BOOKS」(世田谷区北沢2-1-3/☎03-3411-8302)
会費/1000円
下北沢駅改札を出て、左側階段・南口へ降りる。商店街を4〜5分歩くと右側に「王将」があり、その前の「膳場八百屋」を左に曲がると、左側の5軒目。
★『薔薇族』の注文の方法は、郵便局で千円の定額小為替を作ってもらってお送りください。〒155-0032 東京都世田谷区代沢2-28-4-206 伊藤文学
★新しく『薔薇族』を置いてくれる古本店・「ビビビ」が下北沢にあります。〒155-0031 東京都世田谷区北沢1-45-15 スズナリ横丁1F・北沢タウンホールの筋向いです。読者好みの古書が沢山置いてあります。電話03-3467-0085です。
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