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2009年3月24日 (火)

「『薔薇族』の人びと」その6〜小さな縁(えにし)が波紋のように

 1981年(昭和55年)の5月号で、『薔薇族』は100号を迎えた。「創刊10周年100号記念特別号」は、親友の、今は亡き国学院大学教授、阿部正路君が「若葉の風=伊藤文学君のこと」の一文を寄せてくれている。

 楯四郎さんも、「『薔薇族』は歴史を持ったーそして『薔薇族』にまつわるささやかな自分史」を寄せてくれた。

 楯四郎はペンネームだが、早稲田大学の国文科を卒業されて、国営放送のアナウンサーとして活躍された方だ。

 定年になる直前に、ガンで亡くなられてしまったが、『薔薇族』を愛してくれて、多くの名作を残してくれた。

 『薔薇族』との出会いをこう記している。

 「上野の、国鉄から京成に通じる地下道は、そのもの憂さがよく似合う道だった。くすんだ灰色の道である。その夜というのは十年前のある夜、灰色の中にポツンと黄色い一点が浮き、それがたちまち私の目の中いっぱいに広がった。これが私と『薔薇族』との出逢いである。
 地下道の片側には、十人も入ればいっぱいになる酒場、もちろん仲間の、ちっぽけな店が数軒ならんでいた。その中の一つ、なんの飾りもなく、愛想もないが居ごこちも悪くない、互いに干渉せず、それでいてやさしく、少し哀しげな目つきの、歌いもしない男たちが、集まってくる、ちょっと湿った店に、私は時々足を運んでいた。
 いつもチラリと視線を投げるだけで、通り過ぎてしまう私の、その夜ふと足をとめさせたのが、黄色い表紙の、うすっぺらな雑誌である。というよりも、その表紙に描かれている少年の、オレンジ色のTシャツを着て、むき出しの足をかかえている少年の場ちがいな戸惑いの瞳に、描きかたが素人っぽいだけに、かえって新鮮な表紙の少年に、ほとんど一目惚れしたのだと思う。
 雑誌を買うのにためらいはなかった。それというのも、一番上の一冊だけはむき出しのままだが、その下に積んであるのは、すべてカバーをかけている丸富士書店の、客の顔をいちいち好奇の目などは決して向けない店主の、心づかいがあったためと、客同士まったく関心をかわさない都会の気安さのせいであった。」

 それから楯さんは、職場が転勤になって、関西に移られたが、読者の小説募集の社告を見て、たて続けに小説を3篇送られたそうだ。

 その頃の編集部は、僕と藤田竜さんのふたりだけ。亡くなった先妻のミカが、世田谷区立の松沢中学校で体育の教師をしていたときの教え子の男の子が、大手の出版社に勤めていたのをやめて、『薔薇族』の編集部に勤め出していた。

 全国の読者から送られてくる原稿に目を通すのは大変な仕事だった。文通欄の原稿もいろんな紙に書いてくるのを原稿用紙に書き写していたのだから、これも手間のかかる作業だった。

 若いO君が、投稿作品の中から、「すごい作品を見つけましたよ」とすすめてくれたのが、楯四郎さんの最初の小説「弁天小僧暗描画」だった。その小説が載ったのは、創刊してから7号目の『薔薇族』だった。

 O君が、楯さんの作品を見つけ出してくれて掲載したから、楯さんは励みになって、それから多くの名作を書き残してくれた。

 ノンケのO君、頭のいい青年だったが、藤田君と合わなくて辞めてしまったが、O君には今でも感謝している。

 浅草の12階を舞台にした「浅草怨念歌」は、男女の小説なら直木賞間違いなしとまで言われた名作だ。楯さんの作品は、我が社で単行本にしたが、アメリカでも訳されて本になっている。英訳された本を病床で手に取って喜ばれたそうだ。

 小さな縁(えにし)が波紋のようにー。不思議な話しではないか。

100100号記念号、表紙絵・木村べん

★『薔薇族』の注文の方法は、郵便局で千円の定額小為替を作ってもらってお送りください。155-0032 東京都世田谷区代沢2-28-4-206 伊藤文学

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★新しく『薔薇族』を置いてくれる古本店・「ビビビ」が下北沢にあります。〒155-0031 東京都世田谷区北沢1-45-15 スズナリ横丁1F・北沢タウンホールの筋向いです。読者好みの古書が沢山置いてあります。電話03-3467-0085です。

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