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2009年5月23日 (土)

最初で最後の作品に出演

 ミカは「O嬢の物語」、「愛奴」の大きな公演を成功させ、マスコミにも大きな話題を提供し続けてきた。その後、次々と新しいことに挑戦してきたが、もうひとつの試みは、日本初ということで、世間をあっと驚かせた。

 こんなことをした人は、これが最初で最後だったのでは。1969年(昭和44年)の5月10日から30日まで、上野の東京都美術館で開催された、毎日新聞社主催の「第9回現代日本美術展」でのことだ。

 人騒がせな作品を出品した芸術家は、31歳の無名の新人、五月女幸雄さん。一昨年の秋、ミカの舞台を見て感動した五月女さんがミカに手紙を出して、ふたりは知り合い、意気投合して、五月女さんの作品にミカは参加することになった。

 この作品は、「商品1969・5」と名付けられ、タテ180センチ、ヨコ60センチのガラス・ケースの仲に、衣装を着けた女性が横たわり、ライトが点滅するだけという風変わりなもの。中に横たわる女性が見えるのは、ライトがつく数秒間で、消えると何があるのか、さっぱりわからない。

 五月女さんは、ミカの他に、10人ほどの女性に出演を頼み承諾を得ていた。ケースは二つあって、ひとりの出演時間は3時間。その間は水も飲めないし、トイレにも行けない。狭いケースには空気孔もなく、空気の流通は4センチほどの扉の隙間だけ。おまけにライトの熱でケースの中は蒸し暑い。

 五月女さんとミカが裸の展示を考えたのは、展覧会も半ばを過ぎてからのことだ。何しろ美術館にマナの人体が展示されたのは、前代未聞のこと。それだけでも、いろいろと問題があったのに、裸となると作品の除去命令が主催者側からおりかねない。

 そうなったら「美術界への肉体を通しての反抗、美術の概念を突き破る」という、五月女さんの意図も水の泡になる。そこで最終日を待つことになった。ただ心配なことは、ミカが生理が始まるんじゃないかということだ。

 いよいよ最終日が来た。人はますます増えてきた。同じ部屋に展示された作品は、誰も見ようとはしない。ライトがついた。照り映える光を浴びて、汗ばんだミカの白い肌と、鎖が輝いた。

 最前列にいた中年の男性が、体をかがめて顔をガラスに近づけて、一新にバタフライの部分を覗き込む。もっと体を乗り出した瞬間にライトが消えた。照れたように顔を引っ込める男のまわりで失笑がおこる。「いや、心ない観客もいますからね。一度、柵を越えてケースをあけようとした人がいましたからね。見張っているだけでも大変ですよ」と五月女さんはこぼす。

 ケースの中で、ミカは鎖をつかんで、ゆっくりとおりる。大成功だった。3時にライトが消え、3時間にわたるハプニングは終わった。白い布を体にまとって控え室に引き上げる。その後をゾロゾロと観客が追った。

 その頃、控え室で着替えしているミカのことをのぞこうとする、興奮冷めやらぬ男もいた。

 美術雑誌の「芸術生活」(1969年7月号)に、一瞬、ライトがついて、黒山の人だかりで観客が覗き込んでいる、驚きの表情をとらえた1ページ大の写真と記事が載っている。

 文章で長々と書くよりも、1枚の写真の方が、ギラギラする男たちの欲望を的確に捉えていて見事だ。(=この写真は「裸の女房」に載っている)

 その後、五月女幸雄さんとは、一度も会っていない。どうしておられるのか。

Photo_2
この写真はカバーのもう一つの案で採用されなかったもの。

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コメント

↑只の阿呆
とても良い内容の、伊藤文学さんの
ブログを、良く目をかっぽじって
読んでね。

投稿: 桃ちゃん | 2009年5月24日 (日) 11時06分

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