『薔薇族』の人びと・その8〜谷口和己/高校生が書いた小説と信じていたが・・・・・・
「ぼくの書いた原稿です。ぼくはいま高校2年生です。ぼくは小さい男の子が好きだなんて、異常+罪悪と思っていたのですが、この頃はそうじゃありません。やっぱり少年愛も美しい愛の一つの形ということを知ったからです。
それでその記念に、ぼくは小説を書いた。これは全部、本当のことです。ぼくは今でも銭湯に行くし、夏の川辺に行って、男の子のハダカを見に行くし、またシマシマもようの盗んだパンツもちゃんと、しまってあります。もう5年以上も前のことだけど・・・・・・」
こんな前書きがあって、「豊(ゆたか)が死んだ」という小説が送られてきた。昭和49年1月1日発行のNo.15に、初めてこの作品は載せられた。
谷口和己というペンネームは、僕が名付けたものだ。消印は群馬県の高崎となっているが、住所、氏名は書かれていない。
今、読み返してみれば、これは高校2年生の子が書いたものとは思えないが、その頃の僕は高校生が書いたものと信じていた。
「豊が死んだ」が掲載されたら、そのあと続々と作品が送られてきた。恐るべき創作意欲だった。
少年愛の人って、ふだんから抑圧された生活をしているから、そのはけ口として小説を書きまくったのかもしれない。
「僕たち男の子」「麦わら帽子」「わんぱく戦争」「恵太ひとり」「青い鳥の伝説」と、150号を出す間に、21篇もの小説が送られてきた。増刊号にも載せているから、30篇は書いている。
途中からは、高校生ではないなと気付いていた。後半からは愛する少年を殺してしまうというストーリーに変わってきていたから。
欧米では、少年の裸の写真、読み物は規制されていて厳しい。日本でも児童ポルノを取り締る法律が成立するかもしれない。
谷口和己君の作品は、エスカレートするばかりで、残酷に少年を殺してしまうという内容が多くなってきて、スタッフから載せるのを止めようという意見が強くなるばかりだった。
テレビドラマで殺人事件をやっていない日はない。これはフィクションだから許されているわけで、少年を描いた作品は少なく、これを封じ込めたら、少年愛の人が読む小説はなくなってしまう。
僕は皆の反対を押し切って載せ続けていたが、ついに誌上に載せるのを止めてしまった。
「谷口和己」なる人物は、どんな人物なのだろうか。いつの日か、山川純一君の作品と同じように、貴重な30数篇の作品が陽の目を見る日が、きっと来ると信じている。
もう時効が成立して迷宮入りになってしまった事件で、高崎で5歳くらいの男の子が、橋の欄干から、川の中に投げ落とされて殺されたことがあった。
時効になる寸前に、高崎から刑事さんが僕を訪ねてやってきたことがある。警察ってすごいなと思ったが、この谷口和己の存在を探し当てていた。かなり年配の男で、身体に障害があり、施設に入っていて、弱視の人だという。そういえば、原稿の文字が小さく、一字一句が丹念に書かれていた。
施設の中で、来る日も机に向かって書いていれば、妄想は広がるばかりだったのだろう。ある時期に、作者の心の中に、たまりにたまっていたものを全て吐き出す役目を果たした『薔薇族』って不思議な雑誌だと思う。
もっと驚いたのは、5歳の男の子の父親に、子どもの頃、いたずらされたという読者から電話があったことだ。谷口和己もこの世にいない。長い年月が過ぎ去ってしまったのだ。
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