いまだに核兵器を造っている人間がいるなんて!
原爆が投下されて、何十年も草木も育たず人間も住めないと言われたこともあった。それほど放射能は恐ろしいものだった。ものすごい高熱ですべてを破壊し、焼き尽くしてしまったというのに、蛆虫(うじむし・はえなどの幼虫)だけは、死体や軍馬などの死体に湧くというべきか、付着しているという作品が、原爆歌集「廣島」の作品の中に多く見受けられる。
考えつかないほどの生命力だ。それだけにより悲惨か情景が浮かび上がってくる。
蛆(うじ)のみは放射能の中に生きており黒き屍体に白くうごめく
黒き蝿(はえ)一団となり飛び立てり軍馬の死体埋没の箇所に
声出でずうめけるみれば焼けただる腹部に小さき蛆虫動く
火ぶくれし肌へにすでに蛆湧けりかくてこの人また死にゆけり
まさに地獄絵図だ。悲惨というしかない。キリストを信じる国の人たちが、非戦闘員である人々をこのような悲惨な姿にしてもいいものだろうか。
原爆歌集「廣島」を英訳して、多くのアメリカ人に読ませたいものだ。こんな恐ろしいものを今でも製造している人間って、なんなんだろう。
焼けただれて死にいく前に、誰しもが水を欲したのだろう。だが水があるわけがない。
火ぶくれになりて裸に倒れゐる処女水欲るわが足つかみて
焼け切れしシャツ持ちて恥部を覆ひたる女が水乞ひてわれに寄りくる
僕は戦争の末期の頃は、中学一年生だったから、僕が住む世田谷がB29の空襲を受けた時は、周りが火の海になって、空気が熱く感じたのを覚えている。原爆が投下された一瞬というのは、こんななま易しいものではなかった。
子どもを歌った作品も多く胸を打つ。
ズロースのひもひとすじに手をかけし形に死にし少女もありき
焼豚の如く死にたる子の唇(くち)に水与えゐしその母も死せり
こと切れし母とも知らずその乳をまさぐるよこの盲ひたる児は
化膿して口もつむげぬ中学生かすかに舌で「アカータン」とつぶやく
息絶えし母とも知らず幼子は黒焦げ死体にまつはりてをり
仰向けにみな並べたる少年の陰(ほと)の黒きが悲しく消えず
焼けただれ盲(めしい)となりし幼子が母の名呼びてさ迷ひをれり
何にも悪いことをしたわけでもないのに、こんな悲惨な目に遭うなんて。ごく一部の人たちの金儲けのために戦争を引き起こす。どんなことがあっても戦争は止めるべきだ。
「安らかに過ちはくり返しません」という墓碑銘はウォール街にでんと建てよ
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