今も昔も同じことが・・・・。
終戦後、おそらく昭和20年代の後半のカストリ雑誌だろう。「風俗科学」(第三文庫版)の誌名のサブタイトルに「愛と夢を文化人のため」とある。定価は100円だ。コピーしか今見つからないので、正確な発行年月日はわからない。
ペンネームだろうが、古田春生さんという方が、「そどみあは貴方の隣りにいる!」という記事を載せている。「そどみあ」って、今の人には何のことかと思うだろうが、その時代には、ホモという言葉もなかったし、ゲイという言葉もなかった。
見出しに「こんなにも多いのか、なつかしいソドミアの休息あふれる東京の街々、ランデブーの場所をリレー探訪する」とあり、都内のトイレや映画館で、ゲイたちが発展する姿を探訪していて興味深い。 「新宿は『そどみあ』の集る場所として有名である。ここにはこの世界の有名なバアの草分け『夜曲』があり、『イブセン』『グレー』もある。
映画館が三軒並んでいるうちの『B』、日活封切館の三階『M』、紀伊国屋書店の附近の『S』、駅近くの同じく『S』など、なかなかさかんである。
この他、昔、ムーランのあった通りの突き当たりの土手際のトイレが事務所(ゲイの人が集まるところ)だったそうだが、今はあまり来ないらしい。
浅草と違って、新宿はサラリーマン・タイプが圧倒的であることが特長と言えよう。うわさによると、保安隊(自衛隊)の若い人たちも来るという。
ある土曜日の午後、私は『B』へ入った。そどみあ席は例によって、後ろの立ち見席である。扉を開けると、はみ出そうな超満員(当時の映画館は、娯楽が少なかったのでどこも満員だった)なので、次の休憩時間まで三階へ行く。ここも後部は『そどみあ』席である。
二列横隊式の立ち見席、一見してプロらしいハンサムな若者も多い。神田駅近くの『S』にいて、有名な作家に愛されたとかいうC君も、そもそも、この『B』で、はじめて『そどみあ』の世界に入ったという。
最近『S』から『グレー』に移ったというが、ギリシャ彫刻のように、彫りの深い美少年だった。
土曜、日曜は、この二列横隊が、三列にも四列にもなり、両隅の扉のところなど、フェラチオをしているのを見たことがある。
映画は何をやっていようと、一切無関係である。用が済めば、さっさと出て行くし、好みの相手が見つからない時は、一日中だってねばっていられる。
『流し込み』興行のありがたいところである。どちらかに金と時間があれば、今入ったばかりでも、二人連れだって出て行く。おそらく近くのホテルの一室へと急ぐのであろう。
どこの誰だかわからない男と、ろくに言葉も交わさないのに、直ちに肉体的交渉を持つことの悲しさ。性の一種のははけ口としての処理ならば、やむを得ないが、それでいいのだろうか。
『そどみあ』たちは、世上の普通の恋愛と違って、相手を求めるのに困難を極める。人柄、容貌、年齢、地位、その他いろいろ一致しなくてはならない。かりにそれらがぴったりしているとしても、もうひとつの最も重大なものが好みに合わないとダメなのだ。形と色彩と肌触りとその強大さ(オチンチンのことである)。こうしたものが完全にそろうことは、およそ不可能なのだ。だから『そどみあ』たちは、次から次へと理想の男を求めて、さまよい歩く。」
何十年も昔のゲイ達の生態とは言えない。今も同じことが繰り返されているのかもしれない。
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