ぼくの子供がホモだとしたら
今から32年も前の『薔薇族』の「伊藤文学のひとりごと」の欄に、「ぼくの子供がホモだとしても」と題して、こんなことを書いています。
「伊藤さんは隠れていないで表に出ようと言うけれど、都会に住んでいるならいざしらず、小さな田舎町に住んでいるものにとっては、ひっそりと生きていくしか方法がないんだ。伊藤さんは自分がホモじゃないから、そんなことを言えるんで、もし伊藤さんの息子さんがホモだと知ったら、そのときどうしますか。
そんな意味の手紙をある地方の読者からもらいました。確かに僕の子供は男の子が2人いるのです。
上の子は小学校6年生、そろそろ生意気なわんぱく息子になってきています。いつか少年愛の読者が訪ねてきて、自分が写した何十人もの少年の写真のコレクションを見せてくれたことがありました。どれも裸の写真です。こんな写真を撮れる人って、相手の少年が警戒心を起こさせない人、恐らく小学校の先生だと思うのです。
自分の息子と同じくらいの子供たちが、裸でいろんなポーズをとっている写真を見て、ショックを受けないとすれば、嘘になるでしょう。自分の息子がそんな写真を撮られたと知ったら、親である僕はどうするでしょうか。
まあ、そのときのことは、そのときに考えなければ、何とも言えないけれど、自分の息子がホモであったら、これは僕自身、『薔薇族』を刊行し、多くの読者にも会って、ある程度は理解しているのだから、知らなければびっくりもするでしょうが、今の僕ならそれほど驚きもしないと思うのです。そんなことで驚いていたら、自信を持って『薔薇族』を出し続けていけないでしょうから。
病気でも、変態でもないのだから、子供がそうだからといって、驚く方がおかしいと思うのです。びっくりして精神科へ連れて行くようなことはまずしないでしょう。
ただ、はっきりと言えることは、もし、そうだとわかったら、息子の将来の進路を親として十分に考えてやるべきでしょう。なるべくなら銀行員とか、公務員にはしないで、才能を活かせるような自由業につかせるべきです。子供の向いている職業につかせることが大事なのでは。
ゲイの人は神経が細やかで感受性が豊かなんだから、芸術家とか、サービス業、きれい好きで、よく気がつくから水商売も向いていると思う。」
こんなことを書いていました。僕の2人の息子たちも今では成人して、子供たちの親になっています。
長男の息子も19歳になっていますが、大学受験に失敗して、塾通いの浪人生で来年の受験に向けて勉強中です。
この孫が日曜日に自転車に乗って、近くの区立の図書館に行って、静かな場所で自習をしているようなのですが、そこで中年の男性に声をかけられたようです。
携帯の番号を教えろとか、一緒にゲームセンターに行こうとか、しきりに誘われたとか。そんなことする人は読者に違いありません。孫も僕の話を聞いているから、同性愛の世界は、ほかの若者よりは理解しているでしょうが。
また、次の日曜日に来るからと、その人は言ったそうですが、僕が出向いて声をかけても良いのですが、結論としてはもうその図書館に行かないことだと、孫には言ったのですが。
中年のオヤジさん、また次々と若者に声をかけているに違いありません。ねんとも複雑な気持ちです(当時はゲイという呼び名はありませんでした)。
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