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2009年11月25日 (水)

偉大な男だった、ぼくの祖父。

 昭和5年6月(今から79年前)に中央公論社から刊行された、沖野岩三郎さんの著書「娼妓解放哀話」(1円20銭)に、僕の祖父、伊藤冨士雄のことが書かれている。

 沖野さんが直接、祖父から話を聞いてまとめた本だ。

 「昭和5年4月号の『中央公論』に掲載された救世軍少将、山室軍平氏の伊藤冨士雄を評した一文を左に引用して、伊藤氏の総評にかえる。

 伊藤君はおよそ1200人の芸娼妓の面倒を見て、そのうちの987人を無事に廃業させ、それぞれ堅気(かたぎ)の生活をさせたのです。

 僕は伊藤君のことを思うたびに、実に偉大な男であったとつくづく感心する。なんとなれば伊藤君があの救済運動をするうえには、いつも3つの大きな危険がのぞんでいたからです。

 3つの危険というのは第1に暴力です。いつかもお話ししたように、伊藤君は毎日、家を出るとき、いつ、どこで殺されるかもしれないという覚悟をしていたのです。

 半死半生の目にあわされたことが2回、蹴られたり、殴られたり、石を投げられたことは何百回かわかりません。

 それでも伊藤君は平気なものでした。第2の危険は金力でした。金銭でもって人を売買できると考えている樓主(ろうしゅ)たちです。従って人間でも金銭で左右できると思うのは当然です。

 987人の娼妓ひとりにつき、100円ずつ樓主(くるわの主人のこと)側から出しても9万8700円じゃないですか。それだけで稼業を続けさせたなら、樓主はその何倍の利益をみることができるのですから、伊藤君がもし少しでも金に目がくらんでいたなら、どんなことでもできたのですが、実に潔白に身を保ってくれました。

 第3に異性の力でした。男子という男子はことごとく餓鬼(がき)のようにして色を漁る者だというじっけんばかり持っている婦人の前に、たったひとり、伊藤君だけが真実、女性の味方となって、生命がけで働いてくれたのです。

 しかも情が深くて男らしい勇気にみちていたのです。そんな男が千人からの女性の真ん中に立って、神様のように尊敬されているんですから、大きな誘惑の力が、彼の上に襲ってきたことでしょう。

 けれども伊藤君は毅然として誘惑の上を踏み越えて戦ってくれました。本当に感謝にたえません。」

 娼妓を救世軍に救い出されてしまうと、樓主はお金で女の親から買っているのですから、損をしてしまうので祖父のことをお金で買収しようとしたようだ。

 樓主のおかみさんが、祖父の留守に自宅を訪ねて来て、祖母にトイレを貸してくれと言って、トイレの中に多額のお金を包んだものを置いていったそうだ。そのお金もすぐに祖父は樓主に返しに行ったと祖母から聞いたことがある。

 僕の母親が年老いてから杉並にある救世軍が経営する病院で、亡くなるまでお世話になってありがたかった。今の病院は三カ月で患者は追い出されてしまうシステムになっているから。

 担当の医師から、「救世軍人とはいっても、人間ですから」と、お金を要求されてしまった。いくら医師に握らせたかは忘れてしまったが、それから亡くなるまで面倒をみてくれた。

 お金をあげるとき、祖父のことをふと思い浮かべたが、世の中、すべて変わってしまったのだから、救世軍の医師を責めるわけにもいくまい。人間みんな悪くなってしまったのだから。

Photo暴漢に襲われて負傷した祖父


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コメント

はじめまして。
薔薇族にはお世話になりました(^^;

山室軍平(大ゝ叔父)と伊藤さんのお祖父様に繋がりがあったとは、読ませていただくまで全く知りませんでした。自分はゲイなので、なにかとても不思議な感じがします。

復刊されていらっしゃるんですね。見かけたらぜひ買ってみようと思います。どうぞお体に気をつけて、がんばって下さい。失礼しました。

投稿: | 2009年12月18日 (金) 01時38分

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