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2010年1月 4日 (月)

僕は人との出会いにめぐまれていた!

 「蔵書票」といっても、その意味を理解できる人は少ないのでは。中国から伝えられて、印鑑を本に押す「蔵書印」といえば知っている人は多いだろう。

 欧米には、印鑑というものがないから、500年ぐらい前にヨーロッパの貴族たちが、その家に伝えられる紋章を所有する本に貼ったのが蔵書票の最初だといわれている。

 その当時の書物は羊の皮に書かれていて、それを綴じて本にしていたので、その数も少なかった。

 印刷技術がドイツなどで進歩してきて、印刷されたものが本になる時代になってきて、書物の数が増えてきた。

 貴族の家に書物の数が増えてくると、その所有をはっきりさせておくことが必要になり、サインのかわりに考えだされたものが蔵書票だった。

 蔵書票のことをエキス・リブリスともいう。それはラテン語で「誰々の所有」とか「誰々の著書」という意味だ。

 蔵書票を貼る位置は、本の表紙を開くと見返しと呼ばれる無駄な頁がある。そこに貼ったものだから、書物よりも大きいものはない。

 最初は、貴族の紋章を銅版画で刷ったが、19世紀になってからは版画家に依頼して、それぞれの好みの絵を書かせるようになってきた。

 絵というものは大きいからすぐれていて小さいからよくないというものではない。蔵書票というのは、葉書大ぐらいの小さな絵だが、僕は短歌や俳句のようなものだと考える。

 小さな絵の中に、必ずエキス・リブリスという文字を入れる。それと依頼者の名前、制作した版画家の名前も。そうしないと普通の銅版画との違いがわからなくなってしまうからだ。

 そうした約束事というか制約があって、その中で表現し、小さな紙片の中に依頼した人と制作する版画家との思いがこめられる。

 そんな制約の中で凝縮して表現され、しかも小宇宙が存在するゆえに「紙の宝石」とも呼ばれるゆえんでもある。

 1991年の正月のことだった。内藤ルネさんがコレクションするアンティークのお人形を展示する「内藤ルネ・ロマンチック人形コレクション」が宇都宮の東武デパートの催事場で開かれた。

 藤田竜さんに誘われて見に行ったが、催事場の片隅でこじんまりと地元のお医者さんの関根蒸治さんという方が、ご自分のコレクションの蔵書票と豆本を展示しているのが目についた。

 それを見た瞬間、足がすくんでしまった。蔵書票の存在は知っていたが、実物を見たのは初めてで。「これはすごい」と、ただただ感じ入ってしまった。そのとき偶然に会場を訪れた関根さんと出会わなかったら、それほど蔵書票にのめり込むことはなかったろう。

 もっと西洋の蔵書票を知りたいという思いが強くわいてきて、渋谷のパルコの地下にある洋書屋に、蔵書票の参考書がないものかと訪ねてみた。そのとき親切な女店員さんに出会って、ドイツ人で蔵書票に詳しい人を紹介してくれた。

 日本語が上手な方だということで、教えられた電話をかけたら、荻窪駅の前までクルマで迎えにきてくれた。

 この人に出会わなかったらドイツのオークションに入札して、次々と蔵書票を手にすることはできなかったろう。

 人との出会いって不思議なもので、いろんな人との出会いから世界でも初めての蔵書票を展示する美術館をオープンさせてしまったのだから。(つづく)

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