ひとりの若者に、200人もの中年が!
昭和46年の『薔薇族』創刊から、4年経った昭和50年の『薔薇族』25号、その頃は針金とじの薄い、隔月刊から月刊になっていた。頁数も146頁にもなり、文通欄も302人にも増えている。
●北区・雪のような男 自分は雪国出身。肌色が白く、本当に雪のようだと言われます。
自分は20歳。163×52(身長が163センチで体重が52キロということだ)。ジーンズの好きな会社員。毎日が残業、残業で、自分の時間がありません。
週に一度の日曜日だけが、神様が僕に与えてくれた休息日です。こんな日曜日、どこにも行かないので、のんびりしているのが一番好きです。でも何でも話せる友と一緒なら、もっと充実してくると思うのです。お便り下さい(同年代の方、中年はお断り)。写真、返確(写真を希望、返事は必ず出します、ということだ)。
●札幌市・S 中年以上の40歳〜60歳までの男性を求む。小生は160×55の妻あり、子供ある清潔な中年紳士です。
趣味は旅行、読書、文通交際です。経験少ない男性的な優しい方と、清潔な長続きのできる交際を。旅行のできる男性より、北海道外の地方の男性と。返確。
どの人も短い文章の中で、自分をよりよく見せようと懸命だ。雑誌の文通欄でしか相手を見つけられなかった時代だ。中年の人で、若い男性を好む人にとっては、若者で中年の人に呼びかける人がいると手紙が殺到したに違いない。
文通欄に載せたいと思っても、家族がいたり、奥さんにみつかったらと思うと投稿できない。また、載っている人に手紙を出すにしても、相手がどんな人か分からない恐ろしさから手紙を出すのを躊躇してしまう人もたくさんいたのでは。
「一九六番目の中年」と題しての投稿が載っている。兵庫県の中年の人からだ。
「毎月、愛読している中年です。毎号、数百人の通信欄の中から、適当な好みの人を探し出すのが楽しみです。しかし、中年ともなれば、なかなか満たされた条件の相手がいません。それだけに毎日、悲哀を感じています。
9月号の中に、これこそ私たちにぴったりと思われる人がいました。
『あなたは私に届いた196番目の便りです。かつ、お会いする20番目の人です』と。これが返事だった。
全国に行動に現れずにいるであろう、潜在している同志がいかに多いことか。また、一人の文章目当てに200人に及び便りが殺到するとは!
それでも望みを持って出かけました。最初からどうも好いてくれてはなさそうな素振り、言葉でした。しばらく話しているうちに、北は北海道から、南は九州まで、196通の便りが殺到したとのこと。
20番目の私を含めて、これこそみんな未完成に終わりました。がっかりでした。200人がこの若者になめられたわけです。
若者たちにお願い、どうか大人たちのささやかな夢をかなえてくれる人はいないものか。まじめな中年の悲願をかなえてくれるように祈ります。」
この時代の『薔薇族』の読者の「薔薇通信」欄への熱烈な思いが伝わってくるようだ。
ひとりの若者に対して、200人もの中年の男たちが手紙を出す。返事を書くのも大変だったのでは。出しても返事をくれないと苦情を寄せてくる人も多かったが、こんなに多くの手紙が寄せられているとは、手紙を出す人はわからないのだから。
今の世の中、ネットの世界ではどうなっているのか、誰か教えて!
★『薔薇族』の注文の方法は、郵便局で千円の定額小為替を作ってもらってお送りください。〒155-0032 東京都世田谷区代沢2-28-4-206 伊藤文学
★新しく『薔薇族』を置いてくれる古本店・「ビビビ」が下北沢にあります。〒155-0031 東京都世田谷区北沢1-45-15 スズナリ横丁1F・北沢タウンホールの筋向いです。読者好みの古書が沢山置いてあります。電話03-3467-0085です。
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