さようなら、矢頭保の写真集「OTOKO」
矢頭 保(やとう たもつ)という男を撮らせればナンバーワンといえる写真家を知っている人は少ないかもしれない。
初刷は1972年とあるから、今から38年も前のことだから、「OTOKO」という写真集を知らないのは当然のことだろう。
日本で印刷されたものだが、すべて説明は横文字だ。この時代、日本で販売するのは難しかったので、アメリカで販売し、逆輸入して日本でも売られたのだろう。
定価は20ドルとある。その頃は1ドルが360円という時代だったから、7200円で売られていたのか。
横文字が全く読めないのは情けないが、略歴のような下にある1929〜1974は、1929年に生まれて1974年に亡くなったということか。
『薔薇族』が創刊されたのが、1971年だから、その数年後に亡くなっている。だんだんに思い出してきたが、創刊の数年前に出版した「薔薇の告白」の著者、農上輝樹さん(東京の6大学の中の大学図書館の職員)に葬儀に参列してもらったことがあった。
農上さんの話だと、もっと若い人かと思ったら、意外に年を取っておられたので、驚いたと聞いたことがある。
僕は何度か新宿の喫茶店で矢頭さんと会っている。農上さんの著書「聖液詩集」の中に8枚ほどの矢頭さんが撮られた男の写真を使わせていただいた。
「OTOKO」の巻頭には、三島由紀夫さんが雪の上で片膝ついて日本刀を振りかざしている写真が載っている。
矢頭さんもジムに通って、ボディビルに励んでいたそうだが、そのジムで出会った男たちをモデルにしたのだろう。
男の匂いぷんぷんの選び抜かれたいい男たいばかりだ。
この写真集で目につくのは、小道具として使われている日本の骨董品、日本人形、日本刀、タンス、掛け軸、着物、屏風、古時計などが効果を上げている。
矢頭さんが亡くなってから、矢頭さんと親しかった若者から聞いた話だが、矢頭さんはお金持ちの外国人から援助を受けて生活していたようだ。
矢頭さんが亡き後、それらの骨董品は全ての持ち去られ、部屋に残っていたのは、普段使っていた食器類だけだったという。
なんともあわれば話だが、この「OTOKO」の中の写真1枚、1枚にこれらの小道具は見事に生き続けている。小道具に使われた骨董品のすべてが一級品のものだということ、それらをコレクションしていた外国人のセンスもほめられていいのでは。
もう、このような写真集は二度と見ることができない貴重なものといえる。
もう1冊は「Naked Festival」(裸まつり」の写真集だ。
日本各地の裸まつりの写真を納めている。裸まつりに集う男たちを生々と撮っていて見事だ。
この時代だから見れたであろう見事な入れ墨をした男たち、もう、今の時代では拝むことはできないだろう。少年たちのふんどし姿も、もう撮ることはできないから貴重な写真集だ。
今まで大事に手許においてあったが欲しい人がいたら譲ろうと思う。高く買って頂ければありがたいが。
三島剛さんの画集「若者」もおつけしよう。メールでご連絡いただければありがたい。
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コメント
なかなか参考になる文章でした。ラブオイルも使っていたが。か
投稿: 九条院伊織 | 2010年11月22日 (月) 22時13分