身につけていた褌をはずして
最近のテレビの番組はくだらない。「相棒」も役者が変わって、気取った奴が嫌いで見なくなってしまった。水谷豊と正反対の役者が相手役でなければ面白くない。
「時代劇専門チャンネル」が見られるようになって、この世にいない人ばかりが出演している時代劇がよくできているので楽しんでいる。
日曜の夜、9時からの勝新太郎の「座頭市」は、毎週欠かさず見ている。最近、ジャニーズの役者が座頭市を演じたが、これは勝新太郎を冒涜するものだと言っていいだろう。
古い『薔薇族』を読んでいたら、「ある時代劇スターの褌」という投稿が載っていた。大手の映画会社の衣装部で働いていた人からのものだ。
「若い頃、大手の映画会社の衣装部で働いてたことのある私が、体験した裏話をひとつ。
ひとつだけ衣装部で準備できないものがある。それは股道具と呼ばれるところの男優や女優が用いる褌、腰巻といった類の下着のことで、これらは俳優と衣装部が相談をして決め、俳優自身が準備するのが普通である。
だから褌に限って言えば、大きさ、色など、様々で時代劇スターたちは自分の好みの褌を締めていたいたといえる。
時代劇ファンの心理はおかしなもので、立ち回りのときに、チラリとのぞく主演スターの褌に少なからず魅力を感じるものである。
チャンバラのときに必ず褌を見せたのが、かの有名な阪妻こと阪東妻三郎で、彼のセックスアピール満点の立ち回りにしびれた観客も少なくない。(中略)
現実には撮影所の仕事はきつく、スターには専属の付き人がいて、近づくことすらできなかった。
そんなある日、『右門捕物帖』という映画の撮影に来ていた有名なOという俳優に会う機会を得た。彼は専属の付き人に突然辞められ、次の付き人が見つからず困っていたが、衣装部での仕事に行き詰まりを感じていた私は、『自分のようなものでよければ、使って頂けませんか』と申し入れたところ、彼は二つ返事で承諾してくれた。
私は、撮影所では、彼の女房役として、身の回りの世話を焼いた。あるときは彼の汗にまみれたシャツや越中褌まで洗濯したこともあった。
そして、約1カ月経って、新しい付き人が見つかったからという理由で、私は彼のいっときの付き人を辞めることになった。
彼と別れる最後の晩、高級料亭に私を誘ってくれた。目に涙さえ浮かべながら、自分が付き人に逃げられ困ったこと、そして、その急場を私によって救われたこと、などを切々と語り、私に頭を下げた。
私は多少酒に酔った勢いで、日頃、口にできなかった欲求をあらわにした。
それは彼に対する私の思慕の情の深さと、彼からそれを受け入れてほしいという願いであった。彼は大きくうなずくと私の願いに快く応じてくれた。
私は、別れ際に彼の身につけている越中褌を愛の証としてもらいたいと思い、彼に告げると、彼は黙ってその場で締めていた越中褌をはずして、小さくたたむと私の手に握らせてくれた。
たった今まで、彼のすべてを包んでいた越中褌、彼のぬくもり、彼自身の形まで残っていそうなそれを、私は自分の腹巻きの中にしまうと、翌日、撮影所での仕事を辞める決心をした。(高知県・I)」
『薔薇族』の読者には、いろんな人がいて、体験談を寄せてくれた。本当にありがたい雑誌だった。
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コメント
褌は、余り見かけなくなったように、みえます 。締めると身が引き締まる感じでしょうか
投稿: 九条院伊織 | 2010年12月 7日 (火) 17時37分