始めて載った「同性愛」の文字!〜哲学者・中島義道さんの記事に感動〜
たった7行の記事に、僕の心はふるえた。
2011年5月17日(火)の東京新聞の夕刊に載った哲学者、中島義道さんの「震災への『なぜ』今こそ 美談が覆う真実もある」の記事の一節にだ。
三沢典丈さんという東京新聞の記者が、中島義道さんから話を聞いてまとめた記事だ。
三沢典丈さんは、冒頭にこう記している。
「東日本大震災から2ヶ月がたった。震災を契機に戦後の日本が歩んできた道を見直そうというかけ声をよく耳にするが、その具体像は見えて来ない。
被災地の復興も遅々として進まない今、〝新しい日本〟のために何をどう考えればいいのか。『不幸論』などの著書で知られる哲学者・中島義道さんに聞いた」とある。
震災後、僕が心を痛めていたのは、何十万人という被災者の中に、何千人、何万人もの同性愛者もいるに違いないと思っていたからだ。
年配のゲイの人たちは、地方のことでもあるから、ほとんどの人は結婚しないわけにはいかなかっただろうから、奥さんや子どももいたかも知れない。
結婚をしないで独身を通してきた人も数多くいるに違いない。地方のことだから、ゲイだということを隠して暮らしてきた人がほとんどだろう。
その人たちが体育館などの避難場所で、家族で避難している人たちとたったひとりで生活しているとしたら、その苦しさは耐えられないのでは...。
この2ヶ月、新聞には被災者たちの様子が、連日報道されている。週刊誌は売らんがためだろうが、不安を募らせるような記事ばかりだ。
僕はもう、そうした記事は読まないことにしている。そんな中で、始めて中島義道さんの記事の中で「同性愛」という文字を見つけた。
「目下メディアをにぎわしているのは、心温まる家族間の話であり、そこに登場してくるのは原発の作業員と妻、妻を失った被災者の夫、祖母と声を掛け合って助かった孫など、法的に認められた家族だけです。
不倫相手を失った愛人とか、同性愛の恋人を亡くした人などは、全く抹殺され、天涯孤独な人も家族を激しく憎んでいる人も切り捨てられた「健全な」家族の美談だけです」
こんなことを考えてくれる人は中島さんしかいなかった。今の僕には、被災されたゲイの人たちのために、何にもしてあげられないがどうしたらいいのだろうか。
残念ながら東京新聞は読んでいる人が少ない。この記事を読んだ人は、僕のブログを見てくれている人の中にいないだろう。
長い記事なので、要約することは難しいが、ぜひ全文を読んでもらいたいものだ。ネットで見ることってできるのだろうか?
最後に中島さんは、こう締めくくっている。
「今回の大震災で日本人の良い面、悪い面が全て出たのではないでしょうか。被災者たちの品格ある穏やかな態度、全国からの励ましの声などに改めて日本の良さを確認する一方で、日本人の『哲学的なものを見る目』、すなわち『繊細な精神』は、全く育っていないように思われます」と。
「繊細な精神」の持ち主はゲイ特有のものだと思う。
日本を復興させていくために、今こそゲイの人が知恵をしぼって、「繊細な精神」を大きく育てていくべきだろう。
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コメント
素晴らしい記事を拝読させていただきました。
外見では「ふつう」に見られてしまう人でも、心の中では大変な葛藤を抱えているということにはなかなか気づいてもらえないものです。そこをやさしく掬い取ってあげるような記事に感銘しました。
投稿: アーシー | 2011年10月10日 (月) 11時19分
はじめまして。
この記事、私は読みました。
購読しております中日新聞に同じ記事が載っていました。
私は同性愛者ではありませんが、この記事を読んで
大変心を打たれました。そのとおりだと思いました。
大きな災害が起こると救いを求めるかのように
多くの人の共感を呼ぶような家族愛や友情が美談となって
語られます。でもその影にさまざまな人の思い・・・
いろんな立場の人の営みがあるのですね。
それを忘れてはならないのだと気づかされました。
投稿: さら | 2011年6月 1日 (水) 13時04分
こんな慈悲深い眼差しを持ってくれる人がいるのが本当に心にしみる記事ですね。
確かに一般的マジョリティーと思われる存在の物語に人が共感するのは至極当然ですが、存在を忘れられ易いマイノリティ−(同性愛以外でもたくさんありますよね。。)
を見つめる眼差しが有り難いです。
投稿: ロージィー | 2011年5月29日 (日) 10時33分