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2011年12月10日 (土)

高崎の山の上の観音さまが泣いている?

 上越新幹線の列車が高崎駅にすべりこむと、街並みのはるか彼方の山の上に、まっ白な観音像が立っている。そしてホームのすぐ向こう側に大きなビルがあり、「井上工業」と書かれているのが、いやでも目にとびこんでくる。
 群馬県の中堅ゼネコンの「井上工業」の創業者、井上保三郎さんが、私費で賄い、建立後、すべてを市に寄贈したものだ。
 
 保三郎の息子の房一郎さんが、父の意志を継いで奔走し、昭和16年4月13日に、別格本山関東高野山慈眼院は、高崎観音山に移転され、白衣大観音を前立仏と、これを護持する立派な寺院となっている。
 白衣大観音と、慈眼院は高崎のひとつの顔として、老若男女の信仰を集め、参拝客が絶えず、高崎―群馬を代表する観光地ともなっている。
 二代目の井上房一郎さんと、ぼくとの関係は、『薔薇族』の読者だったということだ。房一郎さんは結婚もしていて、長男もおられたが、30歳で亡くなっている。
 
 この時代は同性愛者であっても結婚しないわけにはいかなかった。
 1985年2月16日発行で、『井上房一郎/私の美と哲学』という本を高崎市の「あさを社」から出しているが、今から26年も前のことだ。
 房一郎さんは、1898年(明治31年)高崎市で誕生したとある。この本を出されたときは、87歳とあるから、亡くなられたのは90歳を越えていたに違いない。
 ぼくが設立した「伊藤文学の談話室・祭」にちょくちょく顔を出されていたが、若い人がお好きなようだった。
 その頃、房一郎さんは、80歳を越えていただろうが、『薔薇族』の仲間をみつける「薔薇通信」欄を利用していて、本が発売されるといち早く買い求めて、どかっと手紙を送ってきて、回送を申しこまれていた。
 
 房一郎さんとお付き合いしたことがあったという青年から話をきいたことがある。その頃の上越新幹線は、上野が終着駅だ。上野に「井上工業」の支社のビルもあったので、若者との出会いの場所は、上野の駅前の「丸井」の2階にある喫茶店と決めていた。
 そこで出会って、タクシーで浅草の安宿に青年を誘い、そこでどんなことをしていたかは分からないが、帰りに一万円をくれたそうだ。
 お金持ちなのに、お金にはこまかくて、タクシー代のおつりの10円、20円でもちゃんともらっていたというが、お金にこまかくなければお金持ちになれないのでは。
 
 ゲイであったがために、その美意識と感性はすばらしいものがあった。関東大震災の年、大正12年(1923)から、昭和5年(1930)までの足から8年をパリで過ごした。その頃のパリはエコール・ド・パリの真っただ中のもっとも古き良き時代だった。
 セザンヌを中心として、フランス・ヨーロッパの美術、文化を学んだことが、房一郎さんのその後に大活躍できた根源になっている。
 ドイツの偉大な芸術家であった、ブルーノ・タウトさんが、ヒットラーのひきいるナチスに追われ、日本に亡命してきたのを房一郎さんがかくまって面倒を見た。
 若い人は知るよしもないが「ここに泉あり」という映画は、房一郎さんが作った「群馬交響楽団」を描いたものだ。
 群馬県立近代美術館も、房一郎さんの力でオープンさせるなど、その仕事は多岐に渡っている。
 
 今、新聞に「井上工業」の見せかけ増資事件が報じられ、元社長などが逮捕されている。会社も破産手続きを申請中だ。
 高崎観音山の大きな観音さまは泣いているだろう。房一郎さんも嫌な思いをされずに、いい時に亡くなった。『薔薇族』が房一郎さんの蔭の部分で、お役に立てたのだろうか。
 
 
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写真はイタリアの古い絵はがき

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第3回「伊藤文学と語る会」 
《『薔薇族』401号刊行記念~少年愛について考える~》
12月10日(土)午後2時~4時(予定) ※途中参加・中途退出も自由です。
会費なし(コーヒー代の実費のみ)
会場:下北沢 カフエ「邪宗門」
住所:東京都世田谷区代田1丁目31-1 TEL03-3410-7858
※ますます居場所を失いつつある〈少年愛者〉の問題について、みんなで考えます。当日は、二代目編集長である竜超による401号(700円)の販売も行ないます。

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