大正から昭和初期の子供を描いた絵はがき
お正月というと羽根つき、たこあげ、こままわし、昭和の子供たちの遊びはきまっていた。家の前の通りで羽根つき。車なんて走っていない時代、負けると顔に筆でスミをぬられるものだから、懸命に打ちかえす。羽根を打つ音が路地裏にひびいていたものだ。
原っぱではたこあげ、子供たちは夢中になってたこあげをした。色とりどりのたこが、青空に舞う。家のなかではカルタとり、そんな光景をもう見ることはできない。
正月になると、家々の玄関に二人で派手な衣装を着た漫才師が回ってくる。ひとりは鼓(つづみ)を打ち鳴らし、ひとりは扇子を持っておめでたい口上(こうじょう)をのべるのだが、何をしゃべっていたのかは覚えていない。母親が小銭を渡すと、また次の家に入っていく。
ぼくのコレクションを本にしたら入れようと思っていたものがある。それは子供たちを描いたかわいい絵はがきだ。
今年も多くの友人、知人から年賀状を戴いたが、みんなワープロを使い、味気ないものばかりだ。
大正時代から、昭和の始めごろの絵はがきをお見せしよう。1900年(明治33年)に、私製はがきの使用が認可されたのを機に、日本でも多色刷りの絵はがきが作られた。
日露戦争(1904~05年)の頃には、ヨーロッパでの絵はがきの流行に刺激されて、空前の絵はがきブームが到来する。
日本画、洋画家を問わず、浅井忠、藤島武二、鏑木清方、竹久夢二など、多くの画家がこぞって絵はがきの制作に携わり、優れたデザインと、高度な印刷技術が進歩したことにより、すばらしい芸術的な絵はがきが生み出された。
ヨーロッパでも、1914年前に作られた絵はがきは、こりにこった見事な出来ばえの絵はがきで、まさにアートだ。しかし、第一次大戦により、ヨーロッパが戦場と化したためにその後のものの出来はよくない、戦争はすべてのものを破壊してしまう。絵はがきのことだけ考えてみても、戦争は絶対にすべきではない。
ヨーロッパの絵はがきも、折りをみて紹介するが、目を見はるばかりの美しさだ。
一銭五厘の切手をはられた、子供たちを描いた絵はがき。かなり有名な画家たちが描いたものだろう。100年ぐらい前の子供たちのお正月風景はのどかで、ゲームにうつつを抜かしている今の子供たちは、なんと不幸なことか。
じつにほのぼのとして、時間がゆっくりと流れている。昨年、日本にブータンからやってきた、若い国王夫妻、古き良き時代の日本人を見ているようだった。
テレビでブータンの街を取材しているのを見たが、ほとんどの人が幸福だと感じているブータンの人々、貧しいかもしれないが、この古い絵はがきを見ていると、日本でもこんな時代があったのだと思い出させる。
ぼくが本を出すことを諦めさせてしまったインターネット。すべて便利になってしまったけれど、この古い絵はがきをネットで紹介することになってしまったことを、どう考えたらいいのだろうか。
みなさんにもぼくの複雑な思いを少しでも知ってもらいたいものだ。
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第4回「伊藤文学と語る会」
2月4日(土)午後2時~4時(予定) ※途中参加・中途退出も自由です。
会費なし(コーヒー代の実費のみ)
会場:下北沢 カフエ「邪宗門」
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