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2012年2月13日 (月)

たった一通の手紙から真実の愛が!

 『薔薇族』の1977年の8月号、55号に、ぼくはこんなことを書いている。文通でしか仲間を見付けられない時代の話だ。
 文通欄にのせて、何十通もの手紙をもらった人よりも、たった一通の手紙で幸せになっている人がきっといる。そう思ってある号の一通しか回送をしていない人、丁度30通あまりの人に手紙を出してみた。
「一通の手紙が、あなたにどんな変化をもたらしたか」と。
 返事をくれた人は、7人の人たち、でもいたのだ。ぼくの思ったとおりだった。沢山の手紙をもらえば、粗末にして自分の気に入った人にしか返事を出さないで、あとはほったらかしということにしてしまうだろうが、一通しか手紙がこなければ、きっとその一通をおろそかにはしまい。
 やはり素敵な恋がめばえていた。東北に住む青年と、四国に住む人が、たった一通の手紙で結ばれ、なんと四国に渡って愛する人と一緒に住んでいたのだ。そのうれしい手紙は……。

「薔薇族を通じて、一人の若者より便りをもらいました。東北の生まれだという彼、東京の慶応大学を卒業ということで、空気のいい四国に行きたい、そしてあなたと一緒に生活をと言ってくれた。
 ぼくは高校時代から、人間生まれたときもひとりぼっち、どんなに苦しいときもひとりぼっち、死ぬときもひとりぼっちと考えてきた。
 都会のように素晴らしいハッテン場も知らずにきたぼくが、文通で知り合った彼に、この海の青い、空気の澄んだ四国にやってきてもらうことにした。
 彼も快くやってきてくれた。都会の水になじんだ彼が、田舎町でと思ったけれど住めば都のようだ。
 ぼくらは平凡でもいい、二人だけの生活を始めた。ぼくの親は反対だったが、今ではなにも言いません。二人が仲がいいからだ。
 人生、長いようでも短い。どんな美男子よりも、巨根の持ち主よりも、素直な男がいい。ひとりぼっちの生活よりは、笑い声もでるし、ひとりで食べる食事よりも、二人で食べるほうがおいしい。
 休日の日などは、朝食をすませてセックス、夜は夜で明け方まで。ぼくらはお互いに好きなのだ。子供は生まれないのだから、男と男、好きなときにやればいい。
 ぼくらは教養を高めるためにも、いろいろと勉強もしている。二人でよく旅にも出、先日も高知の足摺岬にもでかけてきた。
 世の中の独身貴族の人も、早く文通欄でいい人を見つけてください。お互いの場にふみこまないようにすれば、社会の人が白い目でみても、町内会にも入って、人と人の輪もけっこううまくやっています。
 ぼくらの住むマンションにも、若夫婦がいっぱいいますが、なにも言いません。ベランダには針植の花盛り、今は二人だけの新しい家を建てようと、貯金もしている。
 一通の手紙からでも、ぼくのように幸福になれるということを知ってもらいたい。」

 たった一通しか手紙が行かなかった人、30名にぼくはせっせと手紙を書いた。そして7人の人しか返事をくれなかったけれど、二人の人がこんな幸せいっぱいの手紙をくれたし、もうひとりの人も、彼が病気になって入院中だけど、手紙のやりとりをしているということだ。
 宝くじだって買わなければ、絶対に当たりっこない。文通欄も思いきって投稿しなければ返事はこないし、仲間はできない。
 今のように個人情報がどうのこうのということがない時代だから、こんなことができたのだ。

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表紙絵・星野悠二

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イラスト・藤田竜

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