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2012年3月 5日 (月)

『薔薇族』を買うとき、店員の目をまっすぐに!

 30年前の中・高生って、今の子供より文章力があったのでは。『薔薇族』の誌上には、「少年の部屋」という頁があって、多くの中・高生が投稿している。その中には長文の投稿も多く、しっかりとした意見をのべているのには感心させられる。
 宮崎県の17歳の高校生が、デパートの中の書店で『薔薇族』を万引きして、女店員につかまり、警備員室に連れていかれ、親を呼び出されてしまった。
 少年は親にゲイだということを知られるのを恐れ、トイレに行かしてくれと言って部屋を出て、屋上から飛び下り自殺してしまった。
 その事件のことを誌上で大きく取りあげ、ぼくも意見をのべたことがあり、それを読んだ高校生の投稿だ。

「ひとつ心にひっかかることがある。それは『薔薇族』を万引きしたところをみつかって自殺してしまった男の子のこと。俺、今、17歳。俺がはじめて『薔薇族』を買ったのは、今年の4月、なにげなく入った栄(さかえ)の古本屋のすみに2冊『薔薇族』が置いてあった。古くさい本の間のその2冊は、俺には輝いて見えたね。
『薔薇族』を買う前は、自分がホモであることに対して、なんていうか、負い目っていうか「自分は世の中の異端児なんだ!」って、そんな「影」がいつも付きまとっていた。
 でも『薔薇族』を買ってからは、自分は変態ではないって思うようになった。世の中の人から見れば、男が男を好きになること自体「変態」かも知れないけど、俺たちは世間の鼻つまみたるべく生まれたわけじゃない。まして化けものじゃないし。それに人が人を好きになることは、素晴らしいことだから、恥じることではない。
 たとえノンケの人だって、俺たちの心が理解できるんだ(たとえば伊藤文学さんのように)ってことが分かったんだ。
 自殺した少年って少し臆病だったんではないだろうか? 結局、彼のしてきたことは、逃げではないのか。店で面とむかって買うことができないから、万引きしてしまった。それで店の人に見つかって、親に連絡され、そして自殺。彼はいったい何と、または誰と戦ったと言えるだろうか? 
 確かに彼にとって万引きは、最大の「勇気」だったかも知れない。店の人を前にして、『薔薇族』を買うこと、それは俺にとっても、また、これを読んでいるほとんどの人にとっても勇気のいることだろう。
 しかし8月号の「特集・伊藤文学のひとりごと」を読むと、まるで少年が『薔薇族』を買うことができなかったこと、そして少年が自らの命を絶ったことが美談であるかのように、書かれていることが、俺には解せない。それは単なる少年の心の弱さであって、決して少年の心の美しさではないと思う。
 弱さ、はかなさには、確かに「美」と呼べるものがある。しかし、この場合、美ではなく、単なる弱さではないか。みんな少しセンチメンタルになりすぎてはいませんか?
 同情することが死者に対するはなむけかも知れない。しかし、それは各人の心の何割かをしめればいいことであり、全面的に「かわいそう、かわいそう」というのは賛成できない。
 俺は『薔薇族』を買うとき、店の人の目をまっすぐに見て、買うように心がけている。人によっては開き直りと見えるかも知れないが、「俺は何もやましいことはしていない」そう思って『薔薇族』を買う。ささいな事かも知れない。でも、それによって世間の人に誤解や、偏見をなくしていければと思う。」

 愛知県のToshi君、今頃、きっといい親父になっていることだろう。いくつもの「美談」を作り出して……。

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第5回「伊藤文学と語る会」 
 
3月10日(土)午後2時~4時(予定) ※途中参加・中途退出も自由です。
会費なし(コーヒー代の実費のみ)
会場:下北沢 カフエ「邪宗門」
住所:東京都世田谷区代田1丁目31-1 TEL03-3410-7858
※テーマなしで自由に語り合います。ぜひ、お出かけを!

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コメント

>30年前の中・高生って、今の子供より文章力があったのでは

メールが普及していない当時、文章を書くのは学校の作文の授業か、日記をつける時くらいでしたよ。ラジオ好きで投稿しているような一部のマニアを除いて、文章を書くことは一般的ではありませんでした。薔薇族に投稿してたのも、一部の常連だったと思います。

翻って今の若い人は(というよりメールが普及したのは90年代であり、当時の若者は今は40代になってます)、メールを四六時中打っており、30年前より全体としての文章力は上がっていると思います。

投稿: | 2013年8月10日 (土) 22時05分

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