読者を楽しませてくれた竜さん
吉田カツさん、イラストレーターとして脚光を浴びて大活躍しておられた方だ。断られても元々と思って電話をかけてみた。意外にもわが家から歩いて、2、3分のところのマンションに奥さんと住んでおられた。
気軽に引き受けてくれて、「いつでも描きますよ」と言ってくれた。それが1976年・No.36・1月号の表紙だ。
あまりにも迫力があって、夜見るとこわいと言ってきた人がいたぐらい。オリンピックの女子柔道で金メダルをとった、オオカミのような目と言われた松本薫の顔を思い浮かべる。
その号に載っている藤田竜作の「男48景・いろかるた」は、才人、竜さんが読者を楽しませようと考えた傑作で、遊び人の竜さんでないと思いつかない発想だ。全部はお見せできないが、そのうちのいくつかを紹介しよう。
●犬も歩けば棒に当たる
いつも歩けど坊やに当たらず
少年愛はつらいね
●花より団子
穴より肉団子
タマタマ・フェチもいるのです
●骨折り損のくたびれもうけ
嫁取り損のくたびれ呆け
長年かくしとおすって、大変なんだから
●チリもつもれば山となる
チリ紙つもって朝となる
「千雅」にはティッシュが何十箱も置いてあるぞ「竹の家」は、ちょっと粗悪紙だなあ(ゲイ・ホテルに泊まったことのない人には分からないだろうな)
●老いては子に従う
老いては殊にしたがる
サウナで先に手を出すのはフケなんだ(老人のことを悪く言っちゃいけないよ。竜さんだって年を取って死んでしまったのだから。一緒に住んでいたルネさんが、竜さんに「相手を思いやる気持ちがあれば、いい男なんだけど」といつも言っていたっけ)
●月夜に釜を抜く
浮き世に釜をさらす
そしてわたしは生きてゆく……
●念には念を入れ
ノンケには銭を入れ
お仲間にはすごいケチなのに(分かっていたはずなのに、ノンケのサギ師に7億ものお金を竜さんはだましとられてしまった。なんということだ)
●年寄りの冷や水
年寄りのイヤ味
男がつかないから、つい……ね
●喉もと過ぎれば熱さ忘るる
喉もと過ぎれば吐き気あふるる
わあ、でっかい
●安物買いの銭失い
薔薇族買いの労力失い
うそ、うそ。安心してかえって成績あがるよ
●貧乏ヒマなし
美貌、妻なし
そういう男はお仲間の可能性大
読者を楽しませたい、いつも工夫をこらしていた竜さん。ぼくより4歳も年下なのに、お先に天国に行ってしまった。ああ。
| 固定リンク
コメント
竜さんでさえも、誌上では本名も素顔も明かすことはできずに、隠れていたわけです。読者への呼びかけの例の言葉も本人自身はかなわず。竜さんは、理想と現実の実態の違いをよく把握して生きていた思います。
投稿: 薔薇族2号 | 2012年9月22日 (土) 03時27分