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2012年9月 1日 (土)

警察の手入れのお蔭で売り上げ倍増!

 37年前の『薔薇族』30号・創刊4周年記念特大号だ。表紙絵も藤田竜さんが描いている。7月号だが、その前に出した2月号と4月号が、警視庁の風紀係によって発禁処分になってしまった。
 この頃の風紀係は、ワイセツ物を取り締まるという意欲に係官が燃えていた時代だ。

「文春ネスコ」から2001年に出版された『浅草フランス座の時間』(井上ひさし・こまつ座編著)に面白いことが書いてある。渥美清・関敬六・谷幹一・長門勇・北野武たちが、踊り子さんたちのショウの合間にコントをやっていて、それが面白かった。
 客の入りが悪くなってくると、支配人が「なんとかしなくちゃ」と声をかけてきて、それが作戦開始の暗号。
 舞台から退場するときに、まちがったふりをして、ツンバ(性器を隠しているもの)を落とす。全客席がハッと息をのむ。そうすると次の日から大入りが続く。
 雑誌も発禁処分を受けると、大損害と思うけれど、発禁の指令を全国の警察署に流す。当時はファックスもネットもない時代だから、どんな方法で知らせていたのだろうか。
 書店の親父さんと、交番のおまわりさんは普段から顔なじみだ。押収に行っても本屋さんはしまいこんでしまうから、棚に並んでいる僅かな雑誌しか持っていかない。そして、あとで売り切ってしまう。
 いつもの号よりも発禁になった方が、返品率がぐっとへるというわけだ。新聞や、テレビでも報道されるものだから、次号からの『薔薇族』の売り上げが増えるというものだ。ストリップ・ショウのお客さんと同じことだ。「週刊新潮」も売り上げが落ちてくると、わざと発禁にさせるという話を聞いたことがある。

 30号の「編集室から」に、ぼくはこんなことを書いている。
「エリザベス女王が来日するというので、警戒がものものしい丸の内かいわいを走って、東京地方検察庁に罰金を払いに行ってきました。
 発行責任者であるぼくが20万円、嵐万作君(男色西遊記の筆者)が、10万円、計30万円を窓口に出しました。「ありがとう」とも、「ごくろうさん」とも言わず黙って受けとりました。そう、なにか言ったらおかしい。黙っていてくれて、それでよかったのです」
 罰金30万円(今はもっと高くなっている)なんて、宣伝費と思えば安いものだ。
 30号に載っていた、平野剛さんのごっつい男が、からみあっている男絵、それもワイセツだというので、始末書を書かされてしまった。
 36号にも平野剛さんの男絵を載せているが、「編集室から」にこんなことを書いている。
「平野剛さんの作品、30号にのせたものが当局から注意を受けましたので、ギリギリの線に押さえてしまいました。
 男と女がからみ合った絵とか、写真は、もっとすごいものが多いのですが、係官にしても、なぜ、こんなゴツイ男と男が抱きあっているのか、理解に苦しみ、生理的な嫌悪感を感ずるのだと思います。
 ぼくとしては、ひとつも嫌らしさを感じないし、むしろ爽快な気持ちにさえさせられます。これがゴツイ男となよなよした男が、抱き合っていたら、きっと嫌らしくなると思うのです。
 レスリングの試合を見ているのと同じにみていいのだと思います」

 木下直之さん著の『股間若衆』に出てくる彫刻家たちも、警察の顔色をうかがいながら、木の葉で隠したり、もっこりにしていたのだろう。平野剛さんの絵をニコニコ動画で、バッチリ見せてしまったが、いい時代になったものだ。

099a

099b
自粛して股間を見せない平野剛さんの男絵

第11回「伊藤文学と語る会」

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9月15日(土)午後2時~4時(予定) ※途中参加・中途退出自由。
会費なし(コーヒー代の実費のみ)
会場:下北沢 カフエ「邪宗門」
住所:東京都世田谷区代田1丁目31-1 TEL03-3410-7858

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初めての方、女性の方、ご年配の方、お一人様、大歓迎!
お気軽なご参加を、お待ちしております。

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コメント

はじめまして、
質問ですが、よろしくお願い致します。

昭和60年より後の薔薇族掲載小説だったと思いますが、
ウィーンの合唱団を好きになってしまう人物の話がありました。
何年の何月号かを、ぜひ教えてください。
伊藤さん、またはブログ読者の皆様、よろしくお願い致します。
過去の薔薇族掲載小説の中で、最高傑作の一つと思っています。
ぜひもう一度、読みたいと思っています。

投稿: 小説好き | 2012年9月 2日 (日) 01時04分

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