猫好きだったルネさんの一枚の写真!
1998年の『薔薇族』9月号.No.308で、10数年も表紙絵を描き続けてくれた内藤ルネさん。この号が最後で、次号から若い野原クロさんに変わってしまった。
ルネさん、もっと、もっと表紙絵を描き続けたかったのだろうが、マンネリになってきたから、若い人に変えようという声が、内部からも起こってきたので、仕方がなく変えることにしてしまった。
その号に「M氏の夢コレクション」というルネさんの連載ページがあって、こんなことが書かれている。
「マル秘中のマル秘の私の大切な一枚をとうとうお見せします。猫派! 藤田嗣治」というタイトルで。
「この写真は人さまに、ぜったい見せたくないと、私の宝箱の奥深くにしまっていた、私の大切な、大切な一枚である。
画家フジタが、パリで東洋の神秘の画風が認められて、大変な人気が出て、仮装パーティや、夏のドービル海岸をトップファッションで、肩で風を切って歩いていた。1920年代後半と思われる若き日のツグジ。
前髪をバッチリ切ったヘアスタイルは、当時、漫談家の大辻司郎、少女を描く人気画家の中原淳一もしており、嗣治を加えて三ガッパと言われ騒がれたという。
長毛の牝の子猫だろうか、嗣治のひざの上で、思いっきり、そっくり返っている猫は――。
シャッター・チャンスという、その文字どおり魔の刻を捕らえたこの写真は、めったに見られない、夢の奇跡の瞬間を凝縮している。
この写真を初めて見た時、私は目を疑い、身震いするほど興奮した。なにしろ猫は写真に撮りにくいが、子猫だから、こんな無邪気なポーズができたのだろう。
嗣治は、その絵の中でたくさんの猫を描いた。
私も犬にはない謎と妖しさが、無限にひろがる猫に惹かれ続けて、うん10年たってしまった猫派だが、一番すごい猫の写真はなんといってもこの一枚で、いつ見ても見飽きないグランドスケールの魅力をあふれさせている。」
ルネさんは、本当に猫好きだった。千駄ヶ谷の億ションに住んでいたときから、毛むくじゃらの猫を何匹も部屋の中で飼っていた。
扉を開けると、なんとも言えない匂いがしたが、飼っているご当人は、匂いなどなんとも感じないのだろう。
この一枚の写真、ルネさんがどこで見つけたのかは分からないが、とにかくルネさんのコレクションは、多岐にわたっていた。
千駄ヶ谷のマンションを出なくてはならなくなり、そのコレクションをダンボールづめにして、ぼくの女房の兄の住む、新潟県の弥彦村にトラックに満載して運んだが、すごい量だった。
10数年あずかっていて、修善寺にオープンさせた「内藤ルネ人形美術館」に運んで、展示したところを見に行ったが、説明できないくらいの品々が並んでいた。
写真を撮ってアルバムに貼ってあるが、新潟に置いてあるので、残念ながら今はお見せできない。探し出して持ち帰り、いずれお見せしたいものだ。
ぼくも若い頃、猫を飼っていたことがある。家の中ではなく、庭というか、外で飼っていた。何を食べさせていたか、忘れているが、家族の食べ残しだったのだろう。
おふくろが猫が嫌いだったのか、捨ててこいと言われ、自転車に乗せて、かなり遠くまで走って置き去りにしてしまった。それが何日もしてから、猫が帰ってきたではないか。そのときの驚きと、喜びは今でも忘れることができない。
第14回「伊藤文学と語る会」
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12月15日(土)午後2時~4時(予定) ※途中参加・中途退出自由。
会費なし(コーヒー代の実費のみ)
会場:下北沢 カフエ「邪宗門」
住所:東京都世田谷区代田1丁目31-1 TEL03-3410-7858
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初めての方、女性の方、ご年配の方、お一人様、大歓迎!
お気軽なご参加を、お待ちしております。
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