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2013年1月 5日 (土)

『アドニス』は『薔薇族』の原点だ!

136  古本業界の雑誌で『彷書月刊』という雑誌が去年まであった。

 古本なんてほとんど読んだことがないぼくは、この雑誌を知らなかった。編集・発行人の田村治芳さんという方が訪ねてこられて、原稿を二度ほど書いたことがある。

 田村さんは、平成23年の1月に亡くなられて、雑誌も廃刊になってしまった。

「アドニス会」というゲイの会員制の雑誌『アドニス』が刊行されたのは、昭和27年9月(1952年)で、10年ほど不定期で出され、63号で警察の手入れを受けて、廃刊になっている。

 その『彷書月刊』が、2006年2月発行の3月号に「特集・アドニスの杯」とあり、堂本正樹さん、伏見憲明さん、本多正一さんなどが執筆していて、ゲイの戦後の歴史を知る上の貴重な資料だ。

 ぼくは「『アドニス』は『薔薇族』の原点だ!――同性愛文学に思うこと」と題して書いている。

「『アドニス』は、ここの編集者の手によって誕生したと言われる『人間探究』の8月号が、ぼくの手許にあって、「特集・同性愛は現代病か」と題して、31頁もの特集が組まれている。

 

 その見出しには「普通人なら顔をそむけるか、ぶべつの色を示すであろう同性愛も、同性愛者にとっては人生の無上の快楽であり、それだけに、その満たされざる時の苦悶は、正にこの世の地獄だ。この地獄の苦悶を直視することも、我々の人間探究に於ける責務であろう」とある。(昭和28年8月号・第35号)

(編集者の中にゲイの人がいたと思う。ノンケの人では、この見出しはつけられない。この雑誌から『アドニス』が生まれたのは、編集者のゲイの人の力だったのでは。)

 同性愛者向けの雑誌などなかった時代で、世間の人も、同性愛者は異常であり、変態であると思い、当事者も自らを性倒錯者と思いこんでいた時代のことだ。

 このような雑誌に同性愛の記事が載ると、地方でひっそりと暮らしている同性愛者は、むさぼるように買い求めて読んだのであろう。

 同性愛の記事を載せると、読者からの反響も大きく、売れゆきもよかったに違いない。
 
『アドニス』50号(1959年刊)記念号に『人間探究』の編集者であり、『アドニス』を会員制で創刊させた、上月竜之介さんが創刊の頃の思い出を寄せている。

「当時『人間探究』の編集にたずさわっていた私が、この会誌を出そうと思い立ったとき、別に成算もなかったし、ましてこれほど長続きしようとも考えもしなかった。(中略)

 

 会誌を出そうと思うようになった直接の動機は、ひんぱんに舞いこむ同性愛者の孤独を訴える投書であった。」

 息をひそめるようにして生きていた読者は、わらをもつかむような気持ちで『アドニス』の誕生を待ちわびたに違いない。

 上月竜之介さんという方が、ご自身が同性愛者だったのかということは分からない。

 同性愛の記事を載せることによって寄せられる同性愛者からの手紙を読んで、編集者としての気持ちが動かされたのかも知れない。

 15号ぐらい続けて、作品社という出版社の田中貞夫さんにバトンタッチしている。健康上の理由からとされているが、本当のところは分からない。(中略)

『薔薇族』が創刊されたのは、1971年、昭和46年。それよりも20年近くも前に、こうした雑誌を発行した、先人の努力をほめたい。

『アドニス』は、『薔薇族』の原点だった。商業誌として日本で最初に創刊できたこと、これはぼくの運の強さだったと言える。そうとしか考えつかないのでは。

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コメント

snow

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少年 LOVELY BOY この雑誌、ご存知でしたか?

ヽ(´▽`)/

投稿: エスパー名無し | 2013年1月 5日 (土) 19時43分

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