よしもとばななさんの『もしもし下北沢』に登場したお店
下北沢の街を登場させた、よしもとばななさんの本『もしもし下北沢』(毎日新聞社刊・定価・¥1500・税別・文庫本にもなっている。)に書かれているレトロな建物。
よしもとさんも、この建物を愛していて、ビルに建てかわることを嘆いておられた。
昭和12年に、おじいさんの時代に建てられた建物で、露崎さん夫婦も一階に住んでいて、カフエや、骨董屋さんなど、いろんな店が入っている楽しい建物で、四月になると桜の花が咲いて見事だった。
よしもとさんは、こんなことを書いている。
「冬に入ってからの露崎館の明かりは、他の季節よりもいっそう温かい。
今にも崩れおちそうな建物のすみずみに明かりがしみているような、冬の空気ににじんでいるような感じがする。私はレ・リヤンが属しているその建物が好きだった。人が住んでいるところにお店が同居している。その感覚は街かどを優しく覆っていた。古い窓ガラスも、音が響いてうるさい階段も、いつかのどこかに経験してだれもが知っている懐かしいものだ。
住んでいるご夫婦のたたずまいも、桜の木も、色とりどりの看板も、もはやひとつの印象のかたまりになって、そのあたりの空気を支配していた。
くもり空のどんよりとした日に、露先館の明かりを見ると胸がじわっと温まる感じがした。私はその古い建物の中で働いていることを四季のあらゆる時期を通して誇らしく思っていた。」
数年前は和物の骨董屋をやっていたので、ぼくもいろんな物を買っていた。その頃はおばあさんも元気で店先に座っていると、それだけで絵になった。それがおばあさん、お父さん、お母さんが次々と亡くなって、子供のいない露崎夫婦だけが残り、老朽化した建物をこわして、7階建てのビルになってしまった。
今、露崎さん夫婦は、一階でカフエ「つゆ艸」(つゆくさ)を経営している。露崎君は52歳だというのに、おじいさんから話を聞いていたのか、下北沢の古い街だったときのことをよく知っているので驚いた。
ビジネス街では、250円の弁当屋が出現している時代に、コーヒー500円はちょっとと思うが、露崎夫婦とおしゃべりできることが、コーヒー代だと思う。ママの笑顔のとりこになっていて、カウンターに座っておしゃべりしていると、心がいやされる思いだ。
「カフエ・邪宗門」での「伊藤文学と語る会」を「カフエ・つゆ艸」に変えようと思う。
下北沢の南口商店街を歩いてきて、「王将」の前を左に曲がるとすぐだ。駅から5分ぐらいだから、今度は来やすいのでは。
日時・2月16日(土)午後2時から4時まで。
会費はコーヒー代500円だけ。初めての方も、女性も、ぜひ気軽にお出かけください。
155-0032 世田谷区代沢5-32-13 露崎ビル1F
TEL03-6805-5385 営業時間12:00~24:00 木曜定休
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