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2013年5月13日 (月)

三島由紀夫と福島次郎と

 平成10年3月に『文藝春秋』から刊行された、福島次郎著の『三島由紀夫―剣と寒紅』。その帯には「四半世紀を経て、綴られる作家の実像・身に潜む「同性愛」の芽を感じてきた著者が、不世出の作家との「秘かな交際」を明かす衝撃の文学」とある。

 三島氏の遺児ふたりが、筆者と出版社を相手に訴えていた裁判で、販売禁止となった。発売して、わずか20日足らずの販売だったのに、ぼくが持っている本は、第4刷とあるから、かなり売れていたと思う。

 1998年(平成10年)の6月号に載った、藤田竜さんの「三島由紀夫はなぜ裸体を見せ続けたのか」は、じつに面白い。三島さんと若き日にベッドを共にしたことがある、竜さんの記事は、三島由紀夫を研究する人はぜひ読むべきだろう。

 竜さんの記事のあとに、河合豊明さん(NHKの職員だった人)が、「『剣と寒紅』―呪縛された魂」と題して書いている。

 藤田竜さん、自分の頁は派手にしているのに、河合さんの記事は、たった一頁に小さな文字でつめこんでしまっている。竜さんらしい扱いだが、この記事も面白い。

 河合さんが昭和26年、大学一年生だったときに、緑が丘の坂の上にある三島邸の玄関左横にあった、福島次郎氏が寝泊まりしたこともあると、その著書に書かれた和室で、青年福島氏と二人きりで、ほんのわずかの間、会話をしたことがあるからである。

 河合さんは、こんなことも書いている。

「内心、小説家になりたいと思っている青春期の若者が、大作家邸で出会ったというだけの、それもその後の付き合いもなく、それっきりでしかなかったのに、覚えているのは、青年期の福島氏の美男ぶりのためか?

 彼の頭髪はまだ短かった。三島さんの書生のような仕事をしているらしいのは、彼の言葉の端で気づかされた。と同時に私は本能的に三島氏との仲を察していた。

 私が出会ったときの福島氏は『禁色』の主人公、悠一の風貌描写に近似値を持っていたからである。このころ緑が丘の三島邸を若者の不遜さで、わたしは何度か訪れている。
 福島氏に会うことは、それっきりなかった。」

 福島次郎さん、三島邸を訪ねたころは、美男子だったようだ。三島さんの『禁色』を読んで、作中の同性愛者が集まるルドンという店が、どこにあるのか教えてほしいと、田舎から出てきた青年が訪ねてきたのをすぐさまルドンに案内したというのだから、気に入ってしまったのだろう。

 藤田竜さんは、こんなことも書いている。ゲイの人って、自分の好みの相手でないと、一緒にベッドを共にしても燃えないものだと。『剣と寒紅』のタイトルだが、「剣」は三島さんのことで、「寒紅」は、三島さんのご母堂のことで、寒紅は最上の紅をさすのだそうだ。

 藤田竜さんの文章も、河合豊明さんの文章もじつに面白い。全部紹介したいが、短い文章ではとても書ききれない。

 河合さんも文筆家をめざしていた方で、話題になった三島さんが文体も変え、ペンネームも変えた『愛の処刑』が載っている。『アドニス』の別冊に、河合さんの小説も載っている。

 こんな福島さんへのねたみとも思える文章を河合さんは書いている。

「晩年とはいえ一流出版社(文藝春秋のこと)から作品がハードカバーで上梓される栄誉をついに担う。そしてもうひとりの少年(河合さんのこと)は、晩年に至るも願い果たさず来るべき終息を待つ」と。河合さんは『薔薇族』の第二書房から三冊も本を出している。大いに誇るべきではないか。

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第19回「伊藤文学と語る会」

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5月25日(土)午後12時~14時 ※途中参加・中途退出自由。
会場:下北沢一番街、カフエ「占茶」
住所:世田谷区北沢2ー34ー11 リアンビル2階 電話・03ー3485ー8978
会費:各自が飲食した分だけ。コーヒー¥380、ハヤシライス¥600

初めての方、女性の方、ご年配の方、お一人様、大歓迎!
お気軽なご参加を、お待ちしております。

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コメント

初めまして、と言うより、お久し振りと言うべきか?文学さんには20代の頃、病気の事で困り果て、電話で相談に乗って頂いた者です、遅ればせながら、その節はお世話様でした。

難しい事は分りませんが、福島氏の著作に、彼が良く三島の伊豆旅行に同行したとあり、その時の二人にどうにもしっくりとしない、歯痒い空気を感じてました。溝が有るのに、三島も彼もそれを修復する努力もせず、かと言って、終わりにする訳でもなく。

そう書いているのは福島氏の虚栄からかもしれませんが。

三島の小説の中に伊豆を舞台にした、バタイユの『眼球譚』と良く似た作品があります。

福島氏がみせた白けが本当なら、何か、三島の性愛への不満、屈折がそんな作品を書かせたのか?と、ふと、そんな根拠も無い連想が。

懇談会、参加してみたいですが、今月は無理ですね。このサイトに気づくのが遅かった。

今後の記事、企画を楽しみにさせて頂きます。

投稿: 釜屋笛吹 | 2013年5月19日 (日) 22時32分

下のコメントの書き間違えの訂正です。

やっているが ⇒ やっていることが

投稿: 間奏曲 | 2013年5月18日 (土) 00時16分

一つ気になること。
伊藤さんは、他の人の勤務先や名前などの個人情報を、ここでもらしていますが、本人や家族、遺族の了解はとっているのでしょうか? 今回の伊藤さんの記事の内容と、実際に伊藤さんがやっているが合っていないような気がして疑問です。

投稿: 間奏曲 | 2013年5月17日 (金) 12時50分

「剣と寒紅」の初版を持っていますが、特別価値がある訳ではないようです。売る側と買う側とでは、価値観が違うようです。
福島氏の「バスタオル」が図書館にありましたが、私の感性に合いませんでした。

投稿: 間奏曲 | 2013年5月17日 (金) 02時56分

それは、ねたみというより羨望でしょうね。
禁色の間奏曲の章が好きです。動物園の出会いを映像化したい。

投稿: 間奏曲 | 2013年5月13日 (月) 04時04分

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