名曲喫茶「ライオン」は思い出のカフエ
1971年(昭和27年)創業の名曲喫茶「ライオン」が、当時のままで営業を続けているなんて信じられない。81歳のぼくが19歳のときだから、駒沢大学に入学した頃のことだ。
62年も創業当時のままで続いている喫茶店って、今の東京にそう多くはないだろう。ぼくの若い頃、昭和の30年代には、名曲喫茶と言われるカフエが、何軒もあった。
日比谷の日活会館の前にも、名前を忘れてしまったが、れんが造りの古めかしい建物のカフエがあった。
昭和40年に日活で、ぼくの原作の『ぼくどうして涙がでるの』が映画化されたとき、日活会館(今はない)を訪れ、帰りに妹の役で初めて主役になった、十朱幸代さんと一緒にコーヒーをのんだので、鮮明に覚えている。新宿のコマ劇場の横にも名曲喫茶があった。そこも何度か訪れたことがあったが、ヤクザの人たちのたまり場になっていて、驚いたこともあったが、コマ劇場も名曲喫茶も今はない。
5月に入って、しばらくぶりにぼくのブログのファンの女性と、渋谷で出会って「ライオン」に寄ってみた。
道玄坂を登っていって、坂の途中を右に折れ、また坂を少し登ると、そこは昔は映画街だった。
右と左に映画館があり、一件は映画の他に実演もあって、忘れてしまったが、歌謡ショウのようなものを観たことがある。突き当たりの建物も映画館だったが、今はすべてマンションになっていて、その建物の裏の方は、連れ込みホテルが軒を連ねている。
「ライオン」のチラシを読むと、「冷房完備」(今では冷房があるのは、当たり前だが、昔は、それが売り物だった。)「珈琲と立体名曲」とある。「アメリカの雑誌オーディオに当店の演奏装置が写真入りで掲載になりましたので、渋谷のライオンは、世界のライオンになりましたことを光栄に存じております。―昭和34年―」とあるだけに、その音響設備は見事だ。
ここではおしゃべりはできない。ひたすら名曲を聴くだけだ。TEL3461-6858 http://lion.main.jp 営業時間は、AM11:00~PM10:30 ブレンドコーヒーは、520円だったと思う。
音量が少し低いのではと思ったが、ぼくの耳が遠くなっているのを忘れていたとは、情けない。
5日の日曜の演奏曲目が、シューベルトの軍隊行進曲、チャイコフスキーのバレエ組曲、くるみ割り人形と、知っている曲でよかった。最近、クラシックなんて聴くことがないので、知らない曲を長々と聴かされたら、彼女とおしゃべりもできず、つらい思いをしてしまっただろう。
「ライオン」に足しげく通っていたのには、わけがある。昭和30年(1955年)ごろ先妻のミカが、日本女子体育大学に通っていて、デートのたびに「ライオン」の2階に誘っていた。
2階の椅子席の背もたれが高く、後ろから見えない。そこでやっと手を握り、キッスをすることができた、思い出のカフエだ。
裏手にあるホテル街に入るお金もなかったし、そんな度胸もなかった。
しかし、今のぼくは性欲とは、関係がない。81歳になるぼくと、デートをしてくれる女性がいるだけで、うれしいことなのだ。
彼女と待ち合わせの時間、彼女が現れるのを待っているワクワク感は、携帯を持たないぼくだけが味わえる貴重なものだ。青春時代のぼくにタイムスリップさせてくれる。
「ライオン」の寿命と、ぼくの寿命と、どちらが先に尽きるのだろうか?
第20回「伊藤文学と語る会」
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6月22日(土)午後12時~14時 ※途中参加・中途退出自由。
会場:下北沢一番街、カフエ「占茶」
住所:世田谷区北沢2ー34ー11 リアンビル2階 電話・03ー3485ー8978
会費:各自が飲食した分だけ。コーヒー¥380、ハヤシライス¥600
初めての方、女性の方、ご年配の方、お一人様、大歓迎!
お気軽なご参加を、お待ちしております。
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