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2013年9月23日 (月)

華麗なる恋の切なき終末… —映画『恋するベラーチェ』—

 60年代、70年代に青春時代を送った人には忘れられない人の名は数々あるだろう。ケネディ、プレスリー……。なかでもポップ・ピアニストとして、絶大な人気を誇ったリベラーチェは、繊細かつ絶妙なテクニックで忘れられない存在だ。

 リチャード・クレイダーマンなどの存在もあるけれど、何といっても目ばゆいばかりの豪華な衣裳、派手なパフォーマンスで、ステージを盛り上げた彼の名は、永遠に記憶されるに違いない。

 この映画はそのリベラーチェが成功を収めるまでのサクセス・ストーリーではなく、すでに絶頂期にあった一時期の秘められた私生活に焦点を当てている。しかもスティーヴン・ソダーバーグ監督、マイケル・ダグラス、マット・デイモンの競演という超一流のスタッフ、キャストが作り上げたという話題も見逃せない。

 四歳のときからピアニストとしての英才を発揮、クラシックから転向、黒のタキシードでは、舞台映えしないと、きらめくようなラメのスーツや、身長の三倍近い毛皮のロング・コート、そして独特のジョークで客席を湧かせ、見事に頂点に登り詰めたリベラーチェ。そのリベラーチェの前に、偶然現れたハンサムな若者スコットは、ゲイ・バアで知り合った振付師の紹介だった。

 一目で惹かれ合う二人。信頼を深め身の回りのすべてをスコットに委せるようになり、スコットもまた貧しい暮らしから、壮麗な大邸宅で、至上の愛に浸る歓びに酔いしれるようになる。

 しかし、頂点に上れば後は下りの道しかないわけで、老いを恐れるリベラーチェは、若返りの手術を受け、スコットもまた若き日のリベラーチェそっくりに整形するように命じられる。だが軟禁同様の毎日に、スコットは不満を感じるようになる。そんなスコットに対し、「今の生活ができりょうになったのは誰のおかげ?」と、リベラーチェ。 

 少しずつすき間風が吹き始める二人。浮気、麻薬? に手を出すようになったスコットは、リベラーチェから贈られた高価な宝石類などを売り始め、やがて破局の危機が……。

 とにかく、これほどぜいたくなゲイ映画は見たことはない。さすがハリウッド。ロス、ラスベガスに移り変わるステージの背景もさることながら、愛とは何か? 信じ合うとはどういうことか? 人それぞれに価値観は違っても、結局、求め合い、結ばれることを願うのが人間本来の姿と知らされる。

 濃厚なベッドシーンなどはないけれど、深く深く沁み入るような愛の感情が、デリケートに表現される。

 いつもながら驚かされるのは、ハリウッドのメイク・テクニック。ラスト近く、エイズに倒れたリベラーチェの姿に息を吞む。最後の最後まで、性別を超えた愛のメッセージ。知られたくない、だけど……。どうしようもない本能のうずきが哀しい。大監督、名優の「勇気」に拍手!(松下芳雄)

 松下芳雄さんは、なんと85歳。淀川長治さんのお弟子さんでもある映画評論家。『薔薇族』誌上で、小説、イラスト、エッセイ、そして映画評論と、大活躍してくれた功労者だ。

 今でも月に15本から、20本もの映画の試写を見続けていてお元気だ。映画なんて最近ほとんど見ていないぼくが、誘われて渋谷にある試写室に連れて行ってもらった。

 ぼくは何組かのゲイのカップルを見てきたが、この映画はゲイのみにくい面、またすぐれた面を赤裸々に描き出していて、ぼくには面白かったが、ノンケの男性には、その心理は理解できないのでは。むしろ女性の方が理解して見てくれるのでは。

 11月1日(金)から「新宿ピカデリー」他全国で配給・東北新社。

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コメント

娘から聞き神尾先生のご家族にお会いしたとの事でよかったですね。人生には思いがけないプレゼントみたいに思える数少ない出来事が時々ある、そんな感じですね。伊藤先生より年上だったとは知らず年が合わないと思っていました。全くインターネットは便利です。どうぞこれからも書き続けて下さい。

投稿: 清水姫美江 | 2013年9月28日 (土) 12時17分

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