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2014年2月24日 (月)

母親だけが悩んでしまうなんて!

「1月のことだった。冬だというのに朝から陽が当たって、春のようなあたたかい日だった。布団でも干そうかなと思っていたところ、電話のベルが鳴った。
 
 電話の声は女性だった。
 
「じつは息子のことで相談したことがあるのですが……」
 
 このお母さんも、ぼくと同じように朝から天気がいいので、ひとり息子の布団を干そうと思って、勤めに出た息子の部屋に入って掃除を始め、なんとなく机の引き出しを開けたらしいのだ。そうしたら引き出しの中から『薔薇族』が何冊も出てきたという。
 
 前日から26歳になる息子さんに、女の友だちはいないし、変だなとは思っていたらしいのですが、現実に雑誌を目の前にして、手にとって頁を開けたときの驚きというのは、想像もつきません。
 
 男が男を愛するということが、不道徳なことであり、汚らわしいことで、恥ずべきことだという、一般の人が抱いている概念がある。その上、異常で変態的な行為だと、ほとんどの人が思っている。それに当事者である本人までが、自分が同性愛者だと気づいたときに罪悪感を抱いてしまう。
 
 もちろん、電話では母親に、同性愛とはこういうもので、異常でも変態でもないということを力説しましたが、なかなか悪いことだと信じきっている母親の気持ちをくつがえすことは難しかった。
 
 お母さんが息子の引き出しの中から『薔薇族』を見つけ出し、手にとって開いたときの驚きを思うと、この本を作っている当事者のぼくとしては複雑な気持ちだ。
 
 80%はポルノ雑誌として作っているのだから、まったく関係のない人が見たら、なんというひどい雑誌だと思うに違いない。
 
 少しでも息子さんのことを理解してもらいたい、そう思ってぼくの著書『心が破けてしまいそう』と、『薔薇族編集長奮戦記』を宅配で母親に送った。
 
 その後、しばらくしてその本がまた宅配で送りかえされてきた。その中に手紙が入っていて、こんなことが書かれていた。
 
「ガラス戸越しに射す陽は明るく、春はもうすぐという気持ちにさせてくれます。過日は私の電話に応えて、早速に、しかも宅急便で本を送っていただき、ありがとうございました。
 
 すぐに礼状を出さなければと思いながら、すっかり気持ちが落ち込んでしまい、なかなか読む気にならず、そのままになって、今日にまで時間が過ぎてしまいました。
 
 その間、予定どおりをこなす日々もありましたが、フラフラと外出すること多くなり、気持ちを整理していたのではないかと、目下はそんな風に考えられます。
 
 自問自答しつつも、自分を責めるのはやめよう、しかし、親として彼に申し訳ないと思う気持ちに変わりはありません。今はただ見守るしかないという気持ちと、先のことをいろいろと思い煩うのはやめよう、と思えるようになりました。ありがとうございました。お礼を申します。ご本はお返しいたします。」
 
 お母さんが悪いわけでもない。まして息子さんが悪いわけではない。それなのになんでこんなにお母さんが苦しまなければならないのだろう。
 
 恐らくご主人には相談しなかったと思う。自分が産んだ息子だからと、自分だけが背負い込んでしまった。
 
 これは21年も前の母親と、息子の話だけど、今、このようなことがあったら、母親はどうするだろうか。
 
 世の中、さまがわりしてしまったから、母親はおどろかないかもしれない。母親の存在って、いつの世にもありがたいものだ。

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コメント

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