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2014年2月 1日 (土)

「伊藤文学のひとりごと」を一番先に!

 こんなうれしい読者からの投稿が載っていた。何時の頃から『薔薇族』の誌上に「伊藤文学のひとりごと」というエッセイ欄を載せはじめたのか、忘れてしまっているが、創刊して数年のちのことだろう。
 
 神奈川県の岬君からのものだ。
 
「『薔薇族』を買ってくると、いちばん先に「伊藤文学のひとりごと」を読むことにしています。いつものように2月号(1978年)の「いつでも帰っておいで」(女性と結婚しなければならなくなり、もう『薔薇族』とは、お別れですと言ってきた読者に呼びかけたもの)を読み出すと、小生の目に涙があふれ、読み終わるや、どうしようもなく嗚咽がもれ、その声を隠すために急ぎ庭へとびだしました。
 
 師走の夜空へ顔をあげてみると、そこには北斗七星が輝いていて、探し当てた小生の思いは、K.I君と共通するその心で、いっぱいだということでした。こんなにもやさしい青年、お母さん思いの人が実在していたことに感激、感涙するばかりです。(K.I君というのは、ぼくがとりあげた青年で、ぼくが母にしてやれる親孝行は、今は結婚することしかないと訴えてきた人のこと)(中略)
 
 小生もK.I君と同じような境遇だった。そんな中で結婚した。そして小生は、言うに言われぬ努力の結果、一応は結婚生活を成功させた。
 
 そして、今は二人の男の子を成人させ、長男の方は、もう恋愛結婚して、二人の孫までいるのに、まだまだ小生は、40代の働き盛りの人生を過ごしているではないか。
 
 突然、小生は夜空に続く海の向こうへ、おもいっきり叫んでみることにしました。
 
「心のやさしいK.I君よ、この夜空の下のどこにいるんだい? 教えてもらえるものならそっと言っておくれ!」
 
 そう繰り返し、繰り返し、呼びかける小生の声は、だんだん小さくなって、岬の沖へこだまし、やがて沈黙してゆきました。
 
 お互いに会えるものなら会って、小生の体験をもっとくわしく話したい。そう思う小生は、あきらめられない心でいっぱいなのです。
 
 遠くの潮騒の音が、近くの海へだんだん押しよせて来たようです。沖合を眺めていると、伊豆半島の山中に、ぴかりとひとつ、それは小さな灯りが光っているのが見えました。
 
 さっき呼びかけてみた、その返事が、そこから聞こえてくるように思われました。
 
「決心したんだ。頑張って、頑張ってみるんだろうよ。いつか『薔薇族』に便りが送られてくる日もあるだろう」
 
 小生は、その日を待つことにして、心からK.I君の健闘を祈りたいけれど、伊藤文学さんが言っている「いつでも帰っておいで」という、その言葉の意味において、結婚生活を失敗させたくないのが本心なのです。
 
 それは心やさしい、K.I君のことを思えばこそであって、そのほかに、何も言うことはありません。
 
 いずれにしても伊藤文学さん、その日にはよろしくお願いいたします。」
 
 このように他人のことを思いやる読者は、残念ながら少なかった。K.I君と、岬さんの境遇がよく似ていたので、女性との結婚生活を上手く過ごしたものとして、だまってはいられなかったのだろう。
 
 40代半ばで、二人の男の子が成人しているようなので、かなり早く結婚したのでは。
 
「言うに言われぬ努力の結果」と、書いているけれど、その努力は大変なものだったに違いない。
 
 今の人には考えられないほど、昔の人は頑張ったということだ。この岬さん、それからの人生をどう送ったのだろうか。
 
 読者の中では、離婚した人も多かったし、自殺する人も多かった。今の世の中、よくなったんだと思うしかない。

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