今どきの子どもも感動させた!
ぼくと妹の紀子(みちこ)との共著『ぼくどうして涙がでるの』は、昭和40年(1965年)今から49年も前に、第二書房から出版された。
当時の「朝日新聞」の力は偉大で、記事になるや、ものすごい反響で、ついに昭和40年秋の芸術祭参加作品として、日活で映画化されてヒットし、本もベストセラーとなり、心臓を病む人々の心の支えともなった。
スペースシャワーネットワーク社から48年ぶりに、編集部の岩崎梓さんの熱意で、昨年の12月に復刻されて発売された。
しかし、時代は代わりネットの時代、本を読む人は少なくなり、以前のようには売れないが、いいものはいい。読んでくれた人は感動し、涙を流してくれている。
2月28日(金)の夜、40年の歴史を持つ「雑学倶楽部」から、出版賞が贈られ、岩崎さんに表彰状と賞金、そして花束が贈られた。
受付でサイン本がすべて売りきれてしまった。骨を折って本にしてくれた、岩崎さんに少しは恩を返せたということだろうか。ぼくもうれしかった。
孫が代沢小学校の6年生、先生に頼まれて授業の始まる前の10分間、ぼくに『ぼくどうして涙がでるの』を子どもたちに朗読して話をする時間を与えてくれた。
ぼくはこの本に登場する、妹と同室だった5歳の坊や、和ちゃんが手術室に運ばれていくくだりを読むことにした。
妹が入院していた東京女子医大の心臓病棟401号室には、患者から患者へ、言い伝えられるジンクスがあった。
手術室に運ばれていく手押し車の上で、患者が涙を流したり、見送るものが泣いたりするとその患者が死ぬというものだ。そんなジンクスが生まれるほど、当時の心臓手術は大変で、医師から成功率は5分5分とか、4分6分とか宣告されたものだ。事実、妹が入院しているときに、何人も亡くなった人がいた。
現在はすべてが進歩して、成功率は9割だそうだが……。
和ちゃんは手術室に運ばれていくときに、ジンクスのことを知っていて、懸命に涙をこらえていたが、自然に涙がぽろぽろと頬をぬらすので、「ぼくどうして涙がでるの、教えてよ看護婦さんと聞いた、弱々しい最後の言葉をタイトルとしてつけたのだ。
阿川佐和子さんが、推薦文に「答えられない。だから私も涙が止まらない」と、書いてくれた。
「伊藤ちゃん、松井ちゃん、松永ちゃん、水野ちゃん、4人のうち、だれかぼくとかわって……」
悲痛な和ちゃんの叫び声だった。
麻酔薬が、和ちゃんの細い腕にぶすりとさされた。そして白い着物を着せられた。大きすぎて、足が引っかかってしまうほどだった。
お父さんがベッドから和ちゃんを抱き上げて、手押し車にのせようとしたが、しっかりお父さんの腕をつかんで、なかなかはなれなかった。
みんなが車にかけよって、かぶさるように和ちゃんの顔に目をそそぐ。
「ぼくどうして涙がでるの、おしえてよ看護婦さん」
毛布をかけようとしている看護婦さんに聞いたが、だれも答えることはできなかった。和ちゃんは涙をこらえて歯をかみしめていた。それでも、いくつも、いくつも美しい宝石のような涙が頬をつたわって落ちた。
お母さんが目頭を押さえて泣いた。みんな泣いた。静かに手押し車は動き出した。」
このまま、和ちゃんは元のベッドに戻ってくることはなかった。
小6の子どもたちの胸にぼくの話がひびいただろうか。
女の子が学校から帰って、母親に涙をこらえて聞いた話を報告したそうだ。図書室に置いてもらった本も、ひっぱりだこでみんなが読んでいると、先生が電話をかけてくれた。
アマゾンに注文して、ぜひ、読んでほしい。読まなければ感動もしないし、涙もでないのだから。
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コメント
今どきの子どもも感動させた!: 伊藤文学のひとりごと
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投稿: cheapoakleys.displayproducts.us | 2014年3月22日 (土) 05時03分
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投稿: eyedy | 2014年3月22日 (土) 01時47分