もう一度、肩を並べて歩きたかった!
『薔薇族』には、「人生薔薇模様」という頁があった。それは読者の投稿欄で、毎号載せきれないほど投稿が多く、それも長文のものが多かった。
いろんな悩みや、体験談が書かれているが、ワープロなんてない時代だから、びんせんや原稿用紙にびっしりと自筆で書かれている。
これは埼玉県所沢市の高校生からの投稿だ。
「大学の合格発表も終わり、4月から大学生となるうれしさでいっぱいの今日このごろだ。
実はぼく、今から1年10ヶ月前、高校1年のとき、同じ高校3年生の先輩、A・Mさんと付き合っていた。
朝の通学のとき彼を駅で見かけて、かっこいい人だと、男のぼくでも思ったりしていた。1年生からは、3年生はまるで雲の上の人で、声をかけることなんてできません。まして声をかけられることは、一種の今日でもあった。
そんなある日、ぼくにとって恐ろしいことが起こってしまう。
いつものようにぼくは友人のSと一緒に、電車に乗っていた。それが電車の揺れで、ぼくはA先輩の足を踏んでしまった。
ぼくはあわてて「どうもすみません。ごめんなさい」と、ペコペコ頭を下げたのだが、A先輩はひとこと「あとで俺の部屋に来い」と……。
A先輩は柔道部だ。友人のSは他人事のように、「健二、もう命がなくなるぞ」と、からかった。学校でぼくはSに頼んだ。「頼むから、一緒に行ってくれよ」と。
行かないわけには行かず、ぼくはひとりで柔道部の部室に行った。部室にはA先輩しかいなかった。
中に入ると先輩は、「お前、いつも所沢から乗る健二だろう。俺、前からお前に目をつけていたんだ。足を踏んだことは勘弁してやるから、俺の弟分になれ!」
ぼくは恐ろしくて、さからえなかったから、先輩にくっついていた。学校では金魚のフンのようで、学校から帰ると、先輩の家に遊びに行ったり、宿題を見てもらったりした。
そのときは、なぜ先輩がこんなに優しくしてくれるのか、わからなかった。もちろん『薔薇族』の存在さえも知らなかった。
そんなある日、先輩にいきなりキスされてしまった。いやだったけれど、先輩が恐かったから、さからえなかった。
それからぼくはもう、先輩と付き合うこと、また会うことさえやめてしまった。彼がきたならしくみえて……。
それから半年後、先輩は卒業してしまった。ぼくが2年生の夏休み、先輩から手紙が舞いこんだ。
「俺が悪かった。何も知らない健二にあんなことをしてごめん。でも、この広い世の中には、俺のように男が男を好きになる人種がいることも知ってほしい。俺は今、大学で柔道に打ち込んでいる。君のことを忘れるために。ここに『薔薇族』を一冊送る。見たくなかったら捨ててもいい」
ぼくはそのとき、初めて『薔薇族』を手にした。そして、ぼくも先輩のようにホモかな? と思ったりもした。
じつは先輩に捧げるこんな詩を書いた。彼もきっとこの『薔薇族』を毎号読んでいると思う。直接、話ができたらと思うが、もう過去のことだし、それに彼には新しい恋人がいるようなので……。だから片隅にでもいいから、この詩をのせてほしい。
「昨日、あなたに似た人を見ました。忘れたはずなのに、心がときめいて、そして、初めて気がつきました。あなたを愛していたんだと」(長いので以下略)
A先輩も、健二くんも、純な気持ちの持ち主だったんでは。ほほえましい。無理やり、手ごめにしてなんてことをしなかった。いい思い出としてふたりの心のなかに残っているのでは。
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コメント
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投稿: ネスタブランド 7分丈 メンズ | 2014年3月24日 (月) 04時49分
願望と妄想と創作が混ざった文章のにおいがしますが。
投稿: 願望と妄想と創作 | 2014年3月17日 (月) 13時51分