フランス料理のメニューは、オシャレだ!
下北沢駅周辺の商店街に、以前は何軒もあった、フランス料理の店は、いつの間にか姿を消してしまっている。
イタリア料理の店は、まだ何軒か残っているのに…。居酒屋ばかりが目立った街になってしまった。
コースで次々と料理が出てきて、ワインを飲んだりすると、一万円では足りない。時間をかけてワインを飲みながら食事をするフランス料理は、若者の街では育たないのかもしれない。
読売新聞社から1988年(今から26年前)に、「アール・ヌーボー/アール・デコ」という大判のムックと呼ばれる、定価も¥2300、華麗なカラー頁が豊富な雑誌が、次々と刊行されていた。
その中には、西洋骨董店がカレーや、ドームの高価な商品を並べて広告を載せている。
日本が景気のいい時代だった。その第3集に、料理研究家の辻静雄さん(1933年2月13日生、1993年3月2日、60歳で没)が、「パリのグルマン」と題して、19世紀末から20世紀にかけてのパリでのフランス料理の話を書いている。その当時に使われたレストランの美しいメニューのコレクションが、紹介されている。
ぼくもこの時代のメニューを少しばかりコレクションしているが、辻さんの解説がなかったら、どんな価値のあるものか知ることはできなかった。
11月28日から10日間、催す渋谷「ポスター・ハリスギャラリー」でのぼくのコレクション展に、展示して販売しようと思っている。
メニューには、なんにも書かれていない未使用のもので、シェフがその日の料理のコースを書き入れたのだろう。辻さんの解説を引用させてもらうことにする。
現在はこのような雑誌はない。西洋骨董を啓蒙してくれる雑誌がないから西洋骨董の愛好家の裾野がひろがらない。
100年も200年も前に残されたものを知ることができないのは残念なことだ。
「フランス料理の歴史の中でのピークは、1860年ごろだといわれています。また料理の盛りつけも、このころ、第二帝政といわれた19世紀の中ごろのフランスでは、すでにすべて完成しつくされているようです。
当時の豪華な盛りつけから見れば、現在の盛りつけはカスみたいといっても過言ではなく、とても比べ物になりません。
しかし、料理の作り方に関しては、1920年代から30年代にかけてがピークだったように思います。その時期のフランスで、特にパリで有名なコックさんたちが作った料理が、現在の私たちの舌にいちばんよく合う料理の味なんです。(中略)
僕はフランス料理を史的に研究するにあたり、1977年に『フランス料理研究』などの文献収集につとめるうち、19世紀の中頃からメニューコレクションができました。こういうものは集めようと思っても集まるものではなく、オークションで買ったものですが……。
フランスでは偉いコックさんが亡くなると、未亡人が蔵書を売りに出すことがあるものですから。そうして集めた中に、二十世紀の初頭にバンコクの宮廷で働いていたユールリースというコックさんの上書が大部分あり、その中に世界各国のメニューがあったんです。(後略)」
辻さん、21年も前に亡くなられているが、メニューのコレクションはどうなってしまったのだろうか。
ぼくのコレクションも息子たちは、まったく興味がないから、ぼくが生きているうちにみんな処分してしまって、好きな人の手に渡してしまいたい。そうしてお金が少し入ったら、フランス料理をコースでしばらくぶりに味わってみたいものだ。
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