好みじゃない男と性しているような!
『薔薇族』が創刊された、1970年代はゲイであっても異性と結婚しないわけにはいかなかった。
その頃、新宿の「伊藤文学の談話室・祭」で「百合族と薔薇族のお見合いの会」を企画したが、結局、男性ばかり30人もの人が集まり、女性は電話をかけてきた人は、何人かいたが出席者はゼロだった。
その時、出会った群馬県の男性と東君と、ぼくは誌上で対談をした。この男性、結婚願望の強い人で、父の経営するお店で働いていて、兄姉は女ばかり、両親と一緒に住んでいるのでどうしても結婚しないわけにいかなかった。
お見合いで結婚したが、その夫婦生活はうまくいったのだろうか? 長い対談なので肝心のところだけ書いてみる。
伊藤・手なんか握ったりしたことはあったのですか?
東・そんなことはしません。
伊藤・なんにもしないで、結婚式をあげて、すぐに結婚初夜を迎えたのですね。
東・式のあとで私も疲れているし、向こうも疲れているから、挿入までいかなかったが、双方が裸で寝ました。
5泊6日の旅行でした。
伊藤・家に帰ってきてセックスをして、なんとなくうまくいったわけですか。かなり覚悟がいるものなのかな。
東・まあ、覚悟でしょうね。緊張するから。結合しなくちゃという焦りがあるからね。
伊藤・そんなに感動しないものですか。義務を果たしたというくらいですか。
東・そうですね。
伊藤・それほど好きじゃないのと、セックスをするわけだから、感激はないわけね。正直にいって。
東・たとえば相手が男だったとしても、好みがあるわけでしょう。好みでない人とセックスしたときの感じですね。
伊藤・自分の好みの人じゃないということは、男の場合だってあるわけです。そのときはそれほど夢中にならない。だいたいそれと同じような感じなんですね。
東・ええ、気持ちはね。
伊藤・なんとなくわかるけれども早い話、好みじゃない人と、一緒になったわけですよね。それを続けなきゃならないのだから、これから何十年か一緒にいなきゃならない。だけど好みになるわけがないでしょう。
今まで君のお母さんがやっていたことを彼女がやらなくてはならない。
東・そうそう、朝と夜の食事の支度はしなくちゃならない。そのほかに洗濯もしなくてはならない。家に帰ってきてからやることはあるわけですね。
伊藤・けっこうあるよね。
東・そういうことをこなしていく。それから今まではたまに、都合をつけて会っていたという程度だったから、実際に二人で一緒に住むという点では、結婚してから双方が同じ立場でやっているわけだし、常にセックスのことだけ頭にある状態じゃないわけです。
伊藤・第三者はどうしても、そのことばかり考えちゃうけどね。いまのところは、あっという間に過ぎちゃったわけだ。
東・セックスに関しては、回数はたしかに少ないです。
伊藤・片方の指で数えるぐらい。
東・そうですね。」
まだまだ話は続く。なんと16頁も使っている。この時代、ぼくは読者の異性との結婚について頭を悩ましていた。
異性と結婚しなければならない読者に少しでも参考になればと考えて、根掘り葉掘り聞いてしまった。東君、数年にして離婚してしまった。子供はいなかった。
| 固定リンク
コメント