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2016年6月25日 (土)

『薔薇族』を万引きまでして読んでくれた!

 朝日新聞の夕刊、社会面のトップに、こんな興味のある記事が載っていた。
 「いまは人生を語らず=新宿・夜の顔・昨今事情=ゴールデン街=若者いらっしゃい」という見出しでだ。
 
 「文化人たちが愛し、1960・70年台に一世を風靡した東京のバラック酒場、新宿ゴールデン街で、歴史を捨てて若い客層向けに、イメージチェンジする店が増えている。
 
 バブル期の地上げによる後遺症と長引く不況で客足は減る一方。待っているだけではだめと、スタンプラリーが催されるまでになり、20代の客で賑わい始めた。
 街の最盛期を知る店主や、常連客からはもう人生を語る場所ではなくなったのかという嘆きが聞こえてくる。」
 
 1960年、70年代は新宿が熱く燃えていた時代だ。いろんなジャンルの若い芸術家が新宿に集まり、それぞれ活躍していた。
 あの頃の熱気はどこに消えてしまったのか。だれも人生論を闘わす人などいない。希望もなければ、なんにも悩まない。今日がなんとなく楽しく過ぎていけばいい。そういう人間ばかりになってしまった。
 
 『薔薇族』への若者からの投稿の一篇、一篇は長かった。それだけ文章力があった。大学入試の受験戦争が大変な頃だったから、どの投稿にも受験勉強で大変だと書いている。
 1980年4月号の「少年の部屋」に石川県の高校2年生T・M君がこんなことを書いている。
 
 「僕は高校2年生。『薔薇族』と初めて出会ったのは、去年のことでした。金沢のある本屋でみつけたのです。
 『薔薇族』のことは、だいぶ前に『週刊平凡』で知りました。
 
 僕がホモに目覚めたのは中学生のとき。それ以来、自分をおさえきれなくなってきたときに出会ったのが『薔薇族』でした。
 学生服だった僕は、レジで買ってしまうと、どこの学校か覚えられてしまうと、そっと自分のカバンの中に入れたのです。
 万引きは初めてだし、もう気が狂いそうでした。家に持ち帰っても、いつ家族に見られないとも限りません。
 
 読んだのはみんなが寝てしまってからの午前3時。初めて見るホモの雑誌。1ページめくったら、予想もつかず男のヌードがあり、もう心臓がハレツしそうになったほどでした。
 一字一句が、しっかりと頭のなかで動いています。全部読み切れず母が起こしに来る時間が迫ってきました。
 今まで考えてもいなかった大事なことがあったのです。それは、この雑誌をどこへ隠せばいいか、母はもうすぐ起こしに来るころだし、あせるだけでした。一応その日はプラモデルの箱のなかにしまいました。
 
 一日を終え、自由な夜がやってきました。昨日の続きを読むことを考え、一日がとても長いのです。箱のなかの本をそっと出して、昨日の続きを読み始めました。活字に目の釘を刺すように、しっかりと読みました。知らなかったことがたくさんありすぎて、頭のなかがいっぱいになってきます。しかし、全部を読み終えた時、ホモとはすばらしい愛だということがわかったのです。(後略)」
 
 万引きまでして『薔薇族』を読んでくれた。そんな雑誌ってなかったのでは。
 「『薔薇族』は僕にとってホモの教科書」と書いてくれたT・M君。きっとその後、いい人生をおくってくれたに違いない。
 

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コメント

目の前にある薔薇族を読みたい気持ちで頭がいっぱいで、私服に着替えるという考えに至らなかったという可能性もあるのではと思います…

投稿: | 2016年6月29日 (水) 02時25分

 学生服で買うとどこの学校か覚えられてしまうというのは、方便でしょう。それなら、私服に着替えて買えばいいわけですから。
 薔薇族が一般雑誌と比較して高価だったことや、レジの人と顔を合わせたくないというのが本心の理由でしょうね。

投稿: | 2016年6月25日 (土) 04時04分

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