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2016年9月24日 (土)

『薔薇族』と読者は一心同体だった!

 『薔薇族』が警視庁の風紀係から発禁処分になったことがあった。
 1975年の6月号に「盛況だった金沢旅行会」という記事が載っていた。今から41年も前のことだから、まだ大きなゲイホテルなどがなかったころのことだ。
 
 ぼくが考えて、読者が参加して仲間を見つけることができるようにと、バスによる旅行会を開いたことが何度もあった。
 我が家のご近所の人で、熱海に小さなホテルを持っている人がいたので、お願いして一晩、借りきったこともある。
 
 世田谷学園の同期生の高橋民夫(亡くなられた)君が支配人をしていた、長野県の女神湖ホテルを借りきってのバス旅行、新宿に集合して2台のバスで女神湖へ。バスの運転手が途中で景色のいいところへ寄りましょうかと言ってくれたが、全員が少しでも早くホテルへというので、女神湖の湖畔に立つホテルへ直行することにした。
 金沢市の郊外の薬師ヶ丘温泉での旅行会だ。金沢はバスでは遠いし、時間もかかるので、現地集合ということにした。
 地元のゲイバア「貴美」のマスターや、現地の読者が一切の準備をしてくれていた。
 
 金沢駅前からタクシーで、薬師ヶ丘温泉へと言ったら、運転手が「田んぼの中の一軒家ですよ。何か秘密の会をやるんでしたら、もってこいですがね。何か会があるんですか」と言われてしまった。
 ゲイの人が150人も集まるなんていうことは金沢では初めてのことだろう。なんと発禁処分のあとだけに、地元の警察に情報が伝わっていたのか、刑事がふたりで様子を見に来たようだ。
 あとで車のナンバーをひかえておいて、参加者を警察に呼び出したとか。別に悪いことをしたわけでないから、おとがめはなかったようだ。
 
 ぼくは女房と、小さかった息子も連れて行った。お風呂が茶色の泥んこで、ぬるぬるしていたのは覚えている。
 大部分の参加者は、旅館のバスに乗って、6時前に到着。開会予定の7時には、大広間にズラリと勢揃いした。
 今回は北は札幌から、南は鹿児島まで。まさに全国から集ったのには驚いた。
 宴会はぼくの挨拶のあと、間宮浩さんの音頭で乾杯し、賑やかに始まった。ゲイの人は歌もうまい、踊りもうまい、地元の人のけんらんたるショウが、舞台いっぱいに繰り広げられた。
 この日に備えて、2ヶ月前から練習をしていたそうで、男舞あり、女舞あり、鏡獅子から洋舞までとびだし、参加者一同おしみない拍手喝采のみごとなものばかりだった。
 
 初めて参加する人も多かったが、旅行会が催されるたんびに参加する常連も多い。それだけ旅行会を楽しみにしていたのだろう。
 いろんな人の隠し芸も飛び出し、宴会も乱れることなく終え、ある人はダンスホールに、ある人は温泉にと。ここのダンスホールは北陸中からダンスの好きな人が集まってくるくらい有名なホールだそうだ。
 温泉は神経痛から、胃腸病、打ち身にまで効果があり、泥湯で濁った茶色で底が見えない。温泉につかりながら、なにをしても分からない温泉だ。
 
 かなり遊びずれした人でも、「こんなに温かい、新鮮な雰囲気は、どんな発展場やバアに行っても求められない」と好評だった。
 ぼくは女房と子供ずれ。ひとりだったら、泥湯の中で、だれかに……。
 こんなことをする雑誌ってそうあるものではない。『薔薇族』のスタッフと、読者はまさに一心同体だった。

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