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2017年3月25日 (土)

幸せな白いブランコ

ぼくのアンティークのコレクションは、異常だった。
 
アールデコの時代に、巴里の美しい女性を書き続けた、ルイ・イカールの銅版画は、日本一のコレクションだ。
 
ぼくは85歳、そろそろということか。
 
子どもたちは、ぼくのコレクションには、なんの興味も持たない。
 
生きているうちに、すべて処分してしまおうと思って売りさばいている。
 
骨董品や、絵画は、景気が悪い国から、景気の良い国へと流れていく。
 
ぼくのコレクション、どんな人の手に渡っているのかは、知る由もない。
 
 
 
平成5年に女房の故郷の新潟県弥彦村に「ロマンの泉美術館」をオープンさせた。
 
しかし、時代が移り変わって『薔薇族』は、インターネットや、携帯電話が普及するにつれて、雑誌は廃刊に追い込まれ、美術館の営業も続けられなくなってしまった。
 
その美術館をこよなく愛してくれて、たびたび訪れていた、新潟市に住む井上美沙さんは、閉館になっている美術館に足を運んでくれていたようだ。
 
そこに取り残されたように置かれていた、イギリス製の白いブランコが、寂しそうにしているのを見て、譲って欲しいと電話があった。
 
あまりにも大きいブランコなので、大型のトラックでないと、運ぶことはできない。
 
確か3万円でお譲りしたと思うけれど、運び代の方がかかってしまっただろう。
 
 
 
ブランコを譲ってから、5年の歳月が流れている。そんな時に嬉しい手紙が舞い込んできた。
 
「なごり雪の中に冬越しを遂げたパンジーが大輪の花をつけて咲いています。
 
窓から庭へ目を向けますと、いつも白いブランコが心を和ませてくれています。
 
思えば伊藤様にブランコをお譲りいただいてから、はや5年、私どもの毎日をどれだけ豊かに彩ってくれていることでしょう。
 
伊藤様へ感謝の気持ちをお伝えできないままに過ごしていることに、なんだか落ち着かない心持ちになりました。
 
ささやかでございますが、お食事のお供にお召し上がりいただきたく、加島屋さん(新潟名物の店で、高価なもの)の瓶詰めをお送りいたします。
 
感謝の気持ちをお伝えできれば、この先、ますます白いハートのブランコとの生活に、幸福を感じて過ごすことができると思います。」
 
 
 
なんともいえない、やさしい女性からの手紙、こんな人がまだ日本にいたなんて。
 
白いブランコ、娘を嫁にやって幸せに暮らしている。そんな嬉しい話ではないか。
 
 
 
お礼状を出したら、また、こんな手紙が。
 
「ロマンで泉美術館、大好きでした。
 
閉館してからも立ち寄り、寂しそうな白いブランコを見てきたものでした。
 
閉館が残念でならなかったのですが、ブランコをおゆずりいただき幸せでした。
 
いつも出かけるときは一緒の父は他界しましたが、この写真のアーチの奥のグリーンの家に母が住んでおり、ロマンの泉フアンの母は、うっとりと、このブランコに揺られて上機嫌に。
 
その母は92歳です。
 
親孝行もさせていただいて、ブランコちゃんのおかげでございます。」
 
手紙の文字もしっかりとしていて.おそらく、頭の良い、そしてやさしい心の持ち主では。
 
 
 
「ロマンの泉美術館」は、10数年で幕を閉じてしまったけれど、白いブランコの写真を見ると、人々の心の中に今なお生き続けているのだろう。
 
A

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