隠さなくったって、もういいじゃない!
新潮社からスゴイ書名の本が出版された。木下直之さんの『股間若衆』に次ぐ本だ。
『せいきの大問題=新股間若衆』、「せいき」は「世紀」と「性器」をかけた言葉だろう。
帯に「時をかけ、世界を股にかける若衆たち。隠さなくたって、もういいじゃない!」
俳優、小林聡美とある。帯に推薦文を書くくらいの方だから、有名な俳優さんなだろうが、どんな方なのかわからない。
こんなときにネットで調べれば、すぐにわかるのだろうが、ネットを触れないのだからどうにもならない。
「隠さなくたって、もういいじゃない!」と言いきるぐらいの方だから、それなりの活動をしている方だろう。
「男の、女の裸体表現の秘所をさぐる天下の奇書」とも書いてある。
ぼくが創刊した『薔薇族』の旗印は「隠れていないで表に出よう!」だったが、そう簡単には表に出られない。まだまだ隠れてひっそり暮らしている人が、大多数なのだから。
性器そのものでなく、女性が裸になることにだって抵抗がある。
それにしても木下直之さん、日本中の裸像の銅像をよく調べ上げたものだ。
時代によって、葉っぱで隠したり、もっこりだけのものもあるし、リアルに大きなものをぶら下げているものもある。
ぼくは警視庁の風紀係に、発禁4回、始末書を書かされること20数回、桜田門までの定期券を買えと、嫌味を言われたことさえある。
警視庁の建物が新しくなって、玄関の扉をあけると、広くなっていて、その壁面に朝倉文夫さんの作の男性の裸像がで〜んと置かれている。
風紀係に呼び出され玄関脇の受付で要件を告げると、係に連絡してくれて、係官が迎えに来てくれる。バッチみたいなものを胸につけて、係官とエレベーターに乗るのだが、ぼくは朝倉さんの裸像を指さして、「アレはいいのですか?」と、聞いてみた。
係官は「アレは自然な形だからいいので、君のところは不自然だから駄目なんだ」と。
警視庁もこの朝倉さんの裸像を今更撤去できないし、なんとなく後ろめたい気持ちがあるのか、写真撮影は許されていない。だから木下さんの本の中にこの裸像は出てこない。
都内の各所に男性の裸像が建てられているが、それを見る人ってあまりいないのでは。
その証拠に足立区の方で、ゲイの青年が殺された事件があり、警視庁の捜査一課の刑事さん二人が、ぼくに話を訊きにきたことがある。
殺された青年は毛深い男で、お尻のまわりも毛むくじゃらで、お尻の回りだけ、毛をそられていた。それは肛門性交するときに、毛があるのと痛いので剃ったのだろう。殺した男もゲイであることは間違いない。
二人の刑事さんに朝倉さんの男性像のことを聞いたら、毎日、通っているのに、その存在を知らないという。興味のないものは見ないということだ。
『せいきの大問題』全部読むとしたら、いつのことになるかわからない。それならば、この本が出ましたよと、ブログに書くことにした。これは面白そうだと思ったら買って読んでほしい。
この本の最後の方に、「ろくでなし子」さんのことが書かれている。木下さんは「ろくでなし子」さんの裁判を傍聴している。このへんのところは、じっくりと時間をかけて読んでみたい。
ぼくは30数年『薔薇族』を出し続けて、「股間」を見続けてきた。
木下直之さん、なんでそんなに「股間」に興味を持つのだろうか。
一般の人はそんなところに目を向けないのに、本にまでしてしまう木下さんって不思議なお人だ。
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