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2017年8月 5日 (土)

フランス映画の1シーンのような恋!

1987年の『薔薇族』1月号NO.168の「伊藤文学のひとりごと」に、ぼくはこんなことを書いている。
 
 
 
「あるファッションモデルから、僕はこんな手紙をもらったのです。その手紙には、できるだけ文章を切り捨てないでください。私の今までの心と今の気持ちを伝えたいし、それによって彼女の気持ちも動くかもしれないからと書いてあるのです。そして相手の女性も毎号、『薔薇族』を読んでいるというのです。
 
何かフランス映画の1シーンを見ているような美しいシーンだから、僕が感激して彼女に協力しても、読者は決して怒らないと思うのです。
 
 
 
オチビちゃんへ!
 
オチビちゃん、この文を読んだら私が誰かわかるよね。貴女と初めて会ったのは、私の出てたファッション・ショウ、一番前の席で瞳を輝かせて見ていたネ。目が合ったので微笑むと、貴女は恥ずかしそうに下を向いてしまった。
 
そのあとで会場近くの喫茶店でバッタリ。貴女は下を向いたまま、真っ赤になって、「貴女がいちばん、きれいでした」と言ってくれた。そして、なぜか、貴女は私の部屋までついてきてしまった。
 
私の肩までしかない貴女を、私はオチビちゃんと呼ぶことにした。何度か訪ねてくれて貴女の気持ちに気付いていたし、かわいいとも思っていたけれど、私はこわくて貴女を抱けなかった。
 
寝つかれないで溜息ついてたのも、私の背中にそっと触れては、その手を引っ込めてたのも、みんな知っていたの。私も迷っていたけれど振り返れなかった。
 
 
 
9月4日、私の誕生日にマンションの前で私の帰りを待っていてくれた貴女。でも男の人の車から降りた私を見て、貴女は走り去ってしまった。目に涙をいっぱい浮かべて、好きだったのに……、ひとことつぶやいて…。
 
あの男性は仕事のスポンサーで食事に誘われただけなのに、そんな説明も聞かないで。電話をくれるのを待っていたのに。
 
 
 
もう、好きじゃなくなった? 私のこと忘れた? だとしたら仕方ないけれど……。
 
 
私、来春、契約が切れたら、母の待つベルギーに行きます。もし、貴女が電話をくれて、今でも同じ気持ちでいてくれるなら、必ず戻ってきて、私、貴女と一緒に人生送ってもいいと思っている。今度訪ねてくれたときは、私はもう、迷わない。今、はっきり気づいたの。
 
 
 
いつからか、貴女が私の心の中に住んでいること、今まで味わったことのない心のときめきと、いいようのない寂しさ。
 
オチビちゃん、私は貴女を愛し始めてしまったみたい……。
 
 
 
横浜市に住む、ファッション・モデルで、24歳になる女性からの愛の切々たる呼びかけの手紙なのです。
 
女の人のことを書くと嫌がる読者もいるかもしれないけれど、僕はこれが男同士ではなくて、女同士であるけれど、人間が人間を愛する気持ちに変わりはないと思うのです。まして女性同士の雑誌は日本にはないのだから、こうして『薔薇族』を読んでくれている女性になんとしても力になってあげたいのです。
 
ショウの舞台から観客席にいる人と目があって、それが恋に変わっていった。まるで小説の世界のことのように思えるけれど現実にこんな話ってあるのです。
 
僕も仙台の七夕まつりに行く夜汽車の中で出逢った女性と、恋をして結婚してしまったから、こういう偶然を信じるのです。
 
 
 
この女性たち、きっと誤解が解けて、出会い、ハッピーエンドになったと、信じています。『薔薇族』ならではの話でした。」
 
A
パリのBON MARCHEのカード

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