いつまでも愛されている内藤ルネさん!
1998年の10月号、№309から『薔薇族』の表紙絵が、内藤ルネさんから若い野原クロさんに変わった。
連載の「伊藤文学のひとりごと」のページに「『薔薇族』は、変わるぞ!」と題して書いている。
ネットで調べれば、ルネさんの命日はすぐに分かるのだろうが、恩人のルネさんと、藤田竜さんの命日は忘れてしまっている。(内藤ルネ=2007年10月24日、藤田竜=2011年1月10日逝去――編者註)
「内藤ルネさん、本当に永いことお疲れさまでした。1984年の2月号(133号)から、木村べんさんと代わって『薔薇族』の顔というべき表紙絵を描き続けてくれました。
14年という永い年月が流れていました。若い読者のほとんどが、ルネさんの表紙絵を見てくれていたということになるでしょう。
今、バックナンバーを一冊、一冊と見ていくと、実に工夫をして、読者をあきさせないように、マンネリにならないようにと、描き続けてきたということがよくわかります。感謝の気持ちでいっぱいです。
昨年の6月、アメリカのロスアンゼルスでのゲイパレードに、ルネさんの描いた『薔薇族』の表紙絵を拡大して、オープンカーの横っ腹に貼って行進したのを想い出します。
内藤ルネさん、藤田竜さんのふたりに出会ったのは、昭和46年の春頃だったと思う。彼らに出会わなければ、今日の『薔薇族』はなかったし、いろんなゲイの人たちへの商売も、今のような隆盛を迎えることはできなかったでしょう。
ルネさんと、竜さんのセンスの良さは抜群で、どちらがどちらということが分からない二人三脚で、仕事をこなしてきました。
『薔薇族』のいいところをあげるとすれば、あたたかさがあるということでしょう。読者を思いやる心のあたたかさがあるのではと自負しています。それは表紙絵にもあって、ルネさんの描く表紙絵は、ロマンティックでほのぼのとした心のあたたかさと、抒情性を感じさせます。
ルネさんもぼくも、昭和7年生まれの同じ年。もっともっと続けてほしかった。しかし、世の中、がらりと変わってしまいました。このへんで思いきって気分を変えようと決断したのです。それはそれは悩みに悩みましたが、決断を下しました。
野原くろ君は、「薔薇通信」で知り合った彼と仲良く暮らしています。そのことを感謝してくれて、『薔薇族』だけにしか仕事をしないと言ってくれている、今どきの若い人には珍しい人たちです。
くろちゃんの絵をぼくは大好きです。くろちゃんはルネさんに代わって、立派に表紙絵を描き続けてくれるでしょう。
彼の劇画は多くのフアンをもっています。きっとくろちゃんフアンもよろこんでくれるに違いありません。
もうひとつ革命的なゲイ雑誌にとって新しい夜明けというか、前々から考えていても実現できなかった夢がついにかなえられたのです。
キリンシーグラムさんが、裏表紙に広告を出してくれたのです。こんなにうれしいことはりません。
読者諸君、お酒は絶対にキリンです。」
ルネさん、もっと『薔薇族』の表紙絵を描き続けたかったのでは……。
ルネさんが残した多くのコレクションを買い取った会社があって、地方の美術館で展示すると、若い人たちが見に来てくれて、大盛況だそうだ。
あるテレビ局が「かわいい」という言葉を世界中にひろめたルネさんのことを取材して番組を制作し、1月の終わりごろ放映するそうだ。ぼくもしばらくぶりに出演することになっている。どんな番組になるのか楽しみだ。
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