まれにみる多才な人なのに!
御巣鷹山に日航機が墜落するという大惨事の年に、ぼくは胆石の手術のために、関東中央病院に入院していた。
どうしたわけか黄疸症状が出て、からだ中が黄色くなってしまった。胆石の手術なら長期間入院することはなかったが、黄疸が治るまで手術はできなかった。その時代、エイズが日本に入ってくるというので、大騒ぎしていた頃でもあった。
日赤に血液を提供すると、梅毒などの性病であるか、ないかを調べてくれるので、読者に泌尿器科には行きづらいので日赤に行くことをすすめていた。
エイズの問題が起きてきたので、それはまずいと、厚生省のお役人から読者に日赤での検査をやめてほしいと、病院にまで電話がかかってきた。
黄疸も治り、いよいよ手術という前日に藤田竜さんから手紙が舞い込んできた。読んでみると、給料を増やしてくれという依頼の手紙だった。
常識的に考えても、そんな手紙は退院してからでもいいことなのに。
藤田竜さんという人は、世間知らずというか、相手の心を思いやる気持ちなどさらさらない人だった。
これは内藤ルネさんが、ぼくによくこぼしていた言葉だった。
藤田竜さんはお金のことに関してはシビアな人なのに、なんで7億円もの大金をむざむざと、詐欺師にとられてしまったのか。
バブルの時代に上北沢に持っていた家と土地、それと江ノ島の方に持っていた土地を売ったお金が7億円にもなっていた。
ルネさんはお金のことはすべて藤田竜さんにまかせきりだったようだ。
ふたりは膨大なさまざまのコレクションを集めていたので、それを展示する美術館を作りたいというのが夢で、すでに伊豆の修善寺に土地を買ってあったようだ。
その美術館を社団法人化しようと考えていたので、そこを詐欺師にねらわれたのでは。
税金のがれに社団法人にする人が増えてきたので、法人化する規制をきびしくするようになっていた。
ゲイの人の一部は、なんでも話せる友人がいない人たちだ。相手を信用してしまうと、疑わない。それにしても男4人、女ひとりの詐欺師に7億円ものお金をだましとられるなんて。
藤田竜さんって、まれにみる多才の人なのに、どこか抜けている大馬鹿者としか言いようがない。全部独断でルネさんには相談しなかったのか。世間知らずのルネさんだって、ちょっとおかしいと思ったに違いない。
一緒に『薔薇族』を長いこと出し続けてきて、お互いに理解するようになっていたのだし、おかしいと思ったら相談してくれればよかったのに。
なんでマンションまでとられてしまったのか。だまされたお金は、そこで諦めればよかったのに。
そのお金をとりもどそうとして、弁護士をやとったりしたのか。それにしてもマンションをでなければならないほど、何にお金がかかったのか。
これも常識では考えられない。
オレオレ詐欺だって、どれだけだまされないように警察も、テレビ局も注意を呼びかけているのに、まだまだ多額のお金をだましとられている。
わが家にも息子の名前で電話がかかってきたが、銀行の通帳にお金が僅かしか入っていないのだから……。
だまされて大金を持っていて払える人は幸せだ。
お金がないってさびしい話ではないか。
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