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2018年3月10日 (土)

東京女子医大 心臓病棟 401号室

伊藤家の子供は、姉、そしてぼく、その下に妹が2人の4人兄妹だ。ぼくは一番下の末娘の紀子をかわいがっていた。
 
美人だったが頭は悪い。青葉学園という最低の女学校にやっと入れたが、大学には入っていない。
 
高校を卒業してからは、勤めには出ず、姉が子供を生んだので、手伝いに行っていた。昭和36年(1961年)の12月、クリスマスの日だった。
 
紀子は急にめまいがして、2階から階段を降りることができず、畳の上にうつぶせになって胸をかきむしり、のたうち回っている。
 
「胸が苦しい!」
 
すごい動悸だった。洋服の上からわかるぐらい心臓が早鐘のように高鳴っていた。
 
近所の医者がかけつけてくれて、注射をうって応急処置をしてくれた。
 
 
 
年が明けて東京女子医大に診察を受けに行った。
 
「すぐに入院の手続きをして下さい。手術をしなければ、あと、2,3年ももちませんよ。相当心臓も肥大していますから」
 
それからいろいろのことがあって、まずは最初の手術は終わったが、あと10年ぐらいしたらまた悪くなるかもしれませんと。
 
もちろん、結婚など無理と言われていたのに、朝日新聞の販売店に勤めていた、北海道浦河出身のK君が、一番熱心に手紙を寄せ続けてくれていた。
 
 
 
そのK君と結婚することになってしまった。
 
東京女子医大は新宿の河田町にある。そこから歩いて4、5分のところにフジテレビがあった。
 
ぼくと妹との共著『ぼくどうして涙がでるの』は、ベストセラーになり、日活で映画にまでなったので、テレビはいろんな番組に出演させてくれていた。
 
フジテレビには、花王石鹸がスポンサーで「テレビ結婚式」という番組があった。話題の人物をとりあげてくれるのだ。
 
司会は徳川夢声さん、介添役に中村メイコさん。ぼくが作詞した「ぼくどうして涙がでるの」を歌ってくれるジェリー・藤尾さん。お客さまには、親族、友人などを30名ほど招待してくれた。
 
それになによりも花王の製品1年分と、電気洗濯機を贈られ、写真も撮ってくれるというありがたい番組だ。
 
ぼくは「妹に!」という詩を朗読した。
 
 
 
妹に!
 
よっちゃん、早苗ちゃん
 
見ているかい 紀子の晴れ姿を
 
東京女子医大・心臓病棟・401号室
 
苦しみ もだえ あがき
 
それでも必死になってたすけあい
 
はげましあって生きようとしたきみたち
 
そして
 
傷つき たおれていった きみたち
 
よっちゃん 早苗ちゃん 守っておくれ
 
見つめておくれ 1銭の貯金もなく
 
住む家もない みみっちい夫婦の誕生なんだ
 
紀子
 
苦しいときは あの日のことを思いおこすんだ
 
10時間におよぶ あの長い手術に耐えた
 
おまえだったということを
 
そしてよっちゃんのぶんも
 
早苗ちゃんのぶんも 長生きしておくれ
 
死にそうな人のたいまつになっておくれ
 
紀子 涙でぼくはきみをおくる
 
「子供だって産めたじゃない」
 
そういう日が来るように
 
きっと きっとなっておくれ
 
 
 
紀子 昭和48年(1973年)12月20日、32歳で没。
 
もう45年にもなる。
 
A
2人の息子を残して死んだ、妹の紀子
 
 
 
※コメント0はさびしい。どんなことでもいいからコメントをよせてほしい。

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コメント

「ぼくどうして涙がでるの」読みたいです。
映画も見てみたいです。

投稿: | 2018年4月 9日 (月) 00時07分

何十年経とうと大切な人が死んでしまう悲しさは忘れられないものですよね
お悔やみ申し上げます

投稿: | 2018年3月10日 (土) 21時19分

衝撃を受けました

投稿: | 2018年3月10日 (土) 14時25分

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