戦争とはどんなに悲惨なものか!
東京新聞の2018年(平成30年)8月3日(月)の夕刊一面に「歴史を忘れたとき重大な過ちを犯す」の大きな文字を白抜きにしたタイトルで、広島原爆の日に記事を載せている。
原爆の日の祭典に、広島市の小学6年生、米広優陽君(12歳)と、新開美織さん(12歳)が、平和への誓いを宣言した。
「人間は、美しいものを作ることができます。人々を助け、笑顔にすることができます。しかし、恐ろしいものを作ってしまうのも人間です。」
恐ろしいものを今なお作り続けている人間が、この世にたくさんいる。
この人たちに読ませたい歌集が『廣島』だ。
ぼくも若い頃、短歌を作っていた人間としてうれしいことは、歌集『廣島』には今時のくだらない短歌というべき口語の作品がなく、萬葉集『広島』と言っていいぐらい伝統を守った作品ばかりであることだ。
だからこそ、芸術作品として評価されていいだろう。
753首の作品の中から選び出すのは難しい。
それに横書きにするのにも抵抗があるがやむを得ない。
1人でも多くの人が読んでくれて、戦争というものがどんなに悲惨なものか知ってもらえれば幸いである。
内田英三 教員
水ぶくれになりて裸に倒れいる処女水欲る吾が足つかみて
火ぶくれし肌へすでにうじわけりかくてこの人また死にゆけり
大沢張夫 会社員
焼けただれ盲となりし幼子が母の名呼びてさ迷ひをれり
全身の火傷に母はこと切れしも抱かれし子は泣きてゐにけり
町ゆけば我が顔を見てあざ笑う心なき子らに涙わきいづ
河内格 獣医師
肌焼けて裸身となりたる女学生ただれた両手で恥部をかくせり
蛆のみは放射能の中に生きて居り黒き屍体に白くうごめく
この子らに何の罪あり死んでゆく眼鼻もわからず黒くただれて
神田三亀男 技師
ズロースのひもひとすじに手をかけし形に死にし少女もありき
吐きすてし血へどに唇にくろぐろと瞬時見む間にはえむらがれる
小堺吉光 公務員
石塀の下敷きのまま骨ありて紅き着物が焼け残りたる
鉄かぶと拾い来りてそこばくの骨を入れたり埋めむとして
頭蓋骨転りてゐるところにて道は曲れり曲りて歩む
小山綾夫 医師
たおれいて収容されし女学生の顔焼けただれゐて脚のみ美し
夜に入りて寒さに叫ぶ火傷者に着せむものとて何ひとつなく
ほうたいをかえんとガーゼ取る肉にうじおびただしき患者に幾日保つべき
火の海をここまでのがれたおれたる老婆の肩に犬くいし跡
(つづく)
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コメント
短歌、言葉から熱や凄まじい臭いが
伝わるような気がしました。
「原爆の悲惨さを伝えたい!」
という思いが、歌になったのですね。
投稿: まり | 2018年8月21日 (火) 09時27分