女に生まれればよかったのに!
「僕って古風な女性みたい」と題して、1994年11月号の『薔薇族』「人生薔薇模様」投稿欄に、神奈川県に住む19歳の学生君が投稿している。
まだ女性とも、男性とも性体験のない気の弱い学生のようだ。
「はっきり言って、僕は普通なのか、それとも普通じゃないのか、自分でもよくわかりません。
ただ、なんとなく近頃、自分の心の中のどこかが、少しずつアンバランスになっているような……。
うまく言えないけれど、何か変なのです。
僕はもうすぐ19歳になる学生です。
見かけはいたって普通の男です。(他人が言うのだから間違いありません)
第一印象は「おとなしくて、頭が良さそう」なんだそうです。
でも親しくなりはじめると、だんだん本性をあらわして、みんなから「変わってる!」と言われます。
人見知りするので、慣れるまで猫かぶってしまうんです。
ひょっとしたら、猫かぶったままのほうがいいのかも知れませんね。
僕って、なんとなく女っぽいと思います。
友達や親しい先輩などからは、「女に生まれればよかったのにな」なんて言われる始末です。
なかには「手術して女になれ、そしたら俺がオマエの最初の男になるから」と、そこまで言う先輩もいました。
違う。別に意識してやっているわけではないんです。
周りから言われて、気がついたというか、「そう言われれば……」みたいな。
言葉づかいや、仕草、性格、雰囲気、そういったものすべてが、どうも男っぽくないようです。
なんか中性的な感じ。
おとなしく黙って身動きひとつしなければ、男に見てもらえるかもしれないけど、そういうわけにはいかないし……。
僕としても今更変に男ぶろうと思わないし、逆に女っぽくしてるわけでもない。
中性的なのは、僕の本質なのだと思います。
これは変えようと思って変えられるものではないと思う(だって昔からず〜っと、こうだから)。
変わろうとも思いませんけど、今の時点では。
こんな僕の夢は、恥ずかしいけれど、本気で好きになった彼と、夜のドライブをすることなんです。
ふたりで街の夜景を眺めるのなんかいいなあと思います。
それから彼が一人暮らしならば、僕が家事をやってあげたり、彼の喜ぶことがしたい。
尽くすタイプかもしれないですね、僕は。
逆に現実的に「これだけはいや」と思うことは、人目も気にせずベタベタすることです。
四六時中、ベッタラ、ベッタラというのは苦手です。
あくまでも普通っぽい、サッパリとした関係が希望です。
僕は小心者で、やっぱり他人の目を少しは気にしてしまうし、非常にあきっぽい性格なので、ベタベタした関係になってしまえば、気持ちが冷めるのも早いと思う。
それにしつこい人って苦手。
サッパリした人が好きです。
でも好きになった人には尽くす(古風な女性みたい!)タイプなのです。」
この学生君、どんな家庭環境に育っているのかわからないけれど、お姉さんがいて、その次の男の子、もしかしたら一人っ子。
よくまあ、いじめにあわなかったようで、周りも彼のことを理解していたのかも。
はっきりしない文章で、すかっとしない、うじうじした感じ。
心の中の女性的な部分を意識すれば、より男っぽくしたいと、からだを鍛えたりするのに、古風な女性みたいな自分に満足している。
このまま年を重ねて行ったのだろう。
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コメント
19歳の気持ちをありのままに書いた良い文章だと思います。
この文章が理解できなければ、ゲイの気持ちをわかっていません。
投稿: | 2018年10月11日 (木) 02時35分