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2019年7月29日 (月)

死刑。5人の刑務官が同時にボタンを!

死刑の話を書いていたら、全身に刺青を入れ、小指を切り落とした元ヤクザだった男から電話がかかってきた。
 
週に1、2度は電話がかかってくるが、「社長、社長」と言いながら話が長い。もう一人、毎日、一度は電話をかけてくる男がいる。この人は『薔薇族』にファッションの話などを執筆してくれた人だ。
 
脳梗塞を患われているので、呂律が回らないから、話がよくわからない。何の用もないのにかけてくる。他に電話をかけるところがないのだから、はい、はいと聞いてあげている。
 
刑務所の死刑台の話、13階段を登って絞首刑にされるのだが、5人の刑務官が同時にボタンを押すのだそうだ。ひとりでボタンを押したら嫌な気持ちになるだろうから、5人で押すとは考えたものだ。
 
 
 
「年々30名内外の死刑執行者がいるが、だいたいみんな従順である。覚悟がいい。もう死刑の宣告を受けて、罪が確定すると生命を限定されたことになるのだから、世の中に執着というものがさらになくなる。
 
罪の確定前、獄中で暴れた者でも、一旦死刑を宣告され、その罪が確定して、いつ、何時に自分は殺されるのだと思うと、ほとんど死人のように静かになる。
 
私の友人で一昨年、大阪で死刑を執行された者がいた。死刑の宣告を受けて、罪が確定すると、私のところへ電報で是非会いたいと言ってきた。
 
死刑囚である友人が、ふたりの看守に惹かれて入ってきた。いつになく落ち着いた態度に驚いた。私の顔を見ると笑いさえ浮かべて、
 
「君は新聞で読むと、とんでもないことをしたね。一体動機はどこにあるの?」
 
私がこう尋ねると
 
「別にとんでもないことをしたと僕自身は思っていない。しかし、法律上悪いことをしたことだけは俺も認めるし、動機なんか聞かないでくれ。ただ一言、人間のなすべきことをしたということだけは言っておく」
 
「で、君は死刑の宣告を受けたのだろう」
 
「そうだ、死刑さ。殺されるわけさ」
 
友人は顔色一つ変えずにこう言った。
 
「で、執行はいつなんだ」
 
「執行か、俺の殺される日か、それはまだわからぬが、4、5日中だ。だから俺がこの世で生きているのは、あと、4、5日というわけになるのさ。4、5日生きていれば結構な話だ」
 
「君はすっかり、覚悟しているのだね」
 
「覚悟なんて、そんなバカなことはない。当然のことだ。人間、自殺することも、病気で死ぬことも、また殺されるということも、死という結果には何の変わりもないのだからね」
 
死に臨んで、何か泣き言でもいうのかと思ってきた私には少々意外な感じがした。
 
「君などは死ということをどんなにか、恐ろしいものとでも思っているのだろう。俺だって死の宣告を受けるまでは、そう思わないでもなかった。しかし、ひとたび死の宣告を受けると、それによって人間の生命は決められたことになるのだから、その決められた範囲においてのみ生きようとするもので、それ以上生きようとは思わない」
 
「そうかね」
 
私は答えただけだった。友人はなおも言葉をついで「君に会いたかったのは、他のことではない。僕の友人に会ったら、Tは罪の前によろこんで死んでいったと伝えてくれ。また、僕の両親には君から、体を大切にといってくれたまえ、それだけで別にいうことはない」
 
友人はこう言って立ち上がった。そして再び看守に引かれて獄屋へ去った。」
  
 
 
この友人はどんな罪を犯したのか? 暗い話ばかり書いたが、僕が死を考える歳になってきたからだろうか。

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