ルネさん表紙絵の『薔薇族』は高価に!
ルネさんが詐欺師たちに、7億円ものお金を騙し取られてしまい、失意のどん底にあったルネさんに、ぼくは『薔薇族』の表紙絵を描くことをお願いした。
その頃のことをルネさんは、エッセイに書き残している。仕事が何にもなくなっていた時だから、ぼくのお願いがどんなにか嬉しかったことか。
「人生ってとんでもないことが突然起こるんですね。1990年台の初頭、バブルの時に全く思ってもみなかった事件が私の上に降りかかってきて、当時の金額にして7億円以上も、数人の詐欺師に持って行かれ、すっかり疲れ切って自殺も3回考えました。
もう生きてゆくことに絶望してた、その上に、私の大切な関係会社(ルネさんのグッズを製造していた会社)もバブルに巻き込まれ(バブルがはじけて倒産したということか)私の仕事もすっかりなくなってしまいました。少女絵や、マスコット、生活用品のデザインの仕事です。
もともと生活するため、食べるために始めた私の絵の生活が、人生で初めてストップして、何もどこからも仕事が来なくなってしまったとき『薔薇族』の表紙絵を描く仕事を伊藤文学さんから依頼され、それは驚きました。それもセクシーこの上もない男たちの絵。ありがたく嬉しかったですよ。
そしてわが人生で初めてのセクシーボーイズを描くことのなんという楽しさをこの時知りました。
ホモ・マガジンの特性上、とにかくセクシーにしなくてはならず、しかも、どんなに妖しくてセクシーでも、そこに清潔感を出して、店頭に並んでも男性はもちろん、女性たちにも愛されるボーイズを描こうと心に決めました。
それからの楽しさ、恐ろしい詐欺事件も、『薔薇族』の表紙を描いたり工夫したりすることで、忘れることができたのですよ。
毎回、毎月、もう、しっかりと変化をつけて、思わず頬ずりするような男の子たちを描いて、それが印刷される嬉しさ。幸い皆さんの公表を得ることができ、長く長く描き続けられたことを幸福に思います。
今、振り返って伊藤さんと夫人の久美子さんに心より感謝を捧げます。
時の流れで表紙をやめることになった時の淋しさ。もっと、もっと描き続けたかったので残念でくやしかったですよ。(私は今だって『薔薇族』の表紙をすぐにでも描きたいのです)
幸いなことに、あれだけたくさん描いたルネボーイズの表紙の男の子たちは色あせず、年を加えるごとに、自分で言うのもおかしいですが、輝きを増していますよ。
全く見ているだけで嬉しくなってくる男の子たち、それが『薔薇族』のルネ・ボーイズなのです。それはホモ男性に私がプレゼントした少年たちなのです。
『薔薇族』の表紙の少年たちを描いているうちに時は楽しく嬉しくすぎてゆき、その時間の経過が私の生活の苦しさを忘れさせてくれました。
不幸な時間を忘れさせてくれたルネ・ボーイズたちありがとう!」
『薔薇族』の表紙絵は、全て芸術作品だった。三島剛さんはたった1号だけしか表紙絵を描かなかったけれど、素晴らしい作品だった。
『薔薇族』が廃刊になった時、多くのマスコミが取材に押しかけてきた。他誌は静かに消えていくだけだったのに……。
中野ブロードウェイの「まんだらけ」の店員さんの話だが、ルネさんの表紙絵の『薔薇族』は高価で売れるそうだ。ルネさん、これはすごいことですよ。ありがとうルネさん!
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