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2021年1月30日 (土)

海が見えるところでの生活があったから!

「『薔薇族』を買ってくると、いちばん先に「伊藤文学のひとりごと」を読むことにしています。(うれしいことを言ってくれる読者だ)

 

いつものように2月号(1978年4月号)を読み出すと、小生の目に涙が溢れ、読み終わるやどうしようもなく嗚咽がもれ、その声を隠すために急ぎ庭へととびだしました。

 

師走の夜空へ顔を上げてみると、そこには北斗七星が輝いていて、探し当てた小生の思いは、K・I君と共通するその心でいっぱいだということでした。

 

こんなにもやさしい青年、お母さん思いの人が実在していたことに感激、感泣するばかりです。

 

同じ夜空の下、きっとK・I君も今この星を眺めながら、どんな思いで過ごしているのだろうか。それを思うと小生はいてもたってもいられなくなってしまい、急に激動に身を突き放されるように、小高い丘から海辺へ続く道を走り出してしまいました。ときどき夜空を見上げるうちに、「ああ、あそこに変わらない星、北斗星があった」その星を追いかけるように、北へ北へ道をくだっていって、いつのまにかず〜っと家から離れた海辺にたどりついていました。遠く潮騒の音が聞こえて、入江の海は静かに光っていました。

 

もう泣いてばかりいてはいけないのですね。もっと辛い思いを乗り越え、一年がかりで強い決心をしていま一生懸命がんばっているK・I君に、小生はいったいどのようにして理解ある励ましの力になってあげられるのだろう。それを長い時間、思案もしてみました。やっぱり小生自身の若い18歳のころの体験を引き出してみようか。

 

小生もK・I君と同じような境遇だった。そんな中で結婚した。そして小生は言うに言われぬ努力の結果、いちおうは成功した。

 

そして小生は、今は、二人の男の子を成人させ、長男のほうはもう恋愛結婚して、ふたりの孫までいるのに、まだまだ小生は40代の働き盛りの人生を過ごしているではないか。

 

突然、小生は夜空につづく海のむこうへ、思いっきり叫んでみることにしました。

 

「心のやさしいK・I君よ、この星空の下にどこにいるんだい? 教えてもらえるものなら、そっと言っておくれ!」

 

そう繰り返し繰り返し呼びかける小生の声はだんだん小さくなって岬の沖へこだまし、やがて沈黙してゆきました。お互いに会えるものなら会って、小生の体験をもっと詳しく聞いてもらいたい。そう思う小生は、あきらめない心でいっぱいなのです。

 

遠く潮騒の音が、近くの海へだんだん押し寄せて来たようです。沖合を眺めていると、伊豆半島の山の中にぴかりとひとつ、それは小さな灯りがひかっているのが見えました。さっき呼びかけてみた、その返事がそこから聞こえてくるように思われました。

 

「決心したんだ、がんばって、がんばってみるんだろうよ! いつか『薔薇族』にも便りが送られてくる日があるだろう」

 

小生はその日を待つことにして、心からK・I君の健闘を祈り続けたいけれど、伊藤文学が言っている「いつでも帰っておいで」という、その言葉の意味において、失敗させたくないのが本心なのです。それは心やさしいK・I君のことを思えばこそであって、そのほかに何を言うことがありましょう。

 

いずれにしてもその日にはよろしくお願いいたします。(神奈川県・岬)」

 

K・I君の投稿にどんなことが書いてあったのか、それを読んでみないと、岬君の本当の気持ちが伝わってきませんが、この時代の読者って、好きでもない女性と結婚して、ふたりの男の子を成人させ、孫までいる。どれだけ耐え忍んで生活をしてきたか。

 

海が見えるところでの生活、それがあったので耐えることができたのだろう。

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